即席の土俵が作られ、いよいよ審神者同士の相撲勝負が始まろうとしていた。

だが、その前に――加州清光がふと疑問を口にした。

「ねえ、そもそも聞きたいんだけど……なんでギョリイを嫁にしたいわけ?」

宇佐美は堂々と答えた。

「それはもちろん! ギョリイ殿が素晴らしいお方だからだ!」

「まあ、それは置いといてさ……ギョリイって、男かもしれないんだけど?」

「………………は?」


宇佐美の表情が凍りついた。

「いや、普通に考えて、ギョリイの性別って不明じゃない? ずっとナマズオマスクつけてるし、服装もどっちとも取れるし、声もナマズオ語だからわかんないし」

「ま、まあ……確かに……」宇佐美は動揺し始める。「だが、それでも! もしギョリイ殿が女性ならば、私はぜひとも――!」

「もし男だったら?」

「えっ」

宇佐美は完全に固まった。

「ギョリイ、男の可能性もあるよな?」

「オラ? オラはオラだっぺな」

ナマズオマスクの下で、ギョリイはゆるりと首を傾げる。

宇佐美の護衛の刀剣男士たちは、明らかに「うわ、こいつ確認せずに求婚してたのか……」という顔になっていた。

「……ま、まあ……それでも私はギョリイ殿を――!」

「でも、もしガタイのいいおっさんだったら?」

「ぐっ……!」

宇佐美は目に見えて揺らいでいる。

「それでも好きと言えるの?」

「うっ……そ、それは……」

「もし、実はすごいマッチョで、素顔がいかつい髭のおじさんだったら?」

「…………」

宇佐美の顔が青ざめる。

「それでも、嫁にほしいの?」

「………………すまない、やはり一度考え直したい」

「はい、解散~!」

清光が手をパンと叩くと、宇佐美はふらふらと本丸の門の方へ向かっていった。護衛の刀剣男士たちが気を遣いながら彼を支えている。

「あの……お騒がせして、すみませんでした」

「いや、まあ……ドンマイ♪」

清光は笑顔で言った。

こうして、ギョリイの求婚騒動は幕を閉じたのだった。