加州清光は山姥切国広の鋭い視線を受けながら、一歩も引かずにギョリイを見つめ続けていた。
「どこまで知っている?」
山姥切の問いに、清光は小さく息をつく。
「……まだ確信はないよ。でも、最近の主の様子を見てると、何かを隠してるのは明らかだよね」
ギョリイの心臓が早鐘を打つ。
(ど、どうするっぺ……!? ここで誤魔化せるか、それとも……!?)
すると、山姥切がギョリイの前に一歩進み出た。
「……主のことを詮索するのはやめておけ」
低く、しかし強い口調だった。清光は驚いたように目を見開く。
「なにそれ、まるで庇ってるみたいな言い方じゃん」
「庇っているわけではない。ただ、知るべきでないこともある」
「……ふーん」
清光はじっと山姥切を見つめた後、ふっと笑った。
「そっか。まあ、今は深く突っ込まないでおいてあげる。でも、俺は主のこと、ずっと見てるからね?」
ギョリイは内心冷や汗をかきながらも、いつもの調子を装って笑う。
「な、なんのことだっぺ? オラはただのナマズオ族の審神者だっぺよ!っぺっぺっぺ」
「……そうだね♪」
清光はそう言い残して、踵を返した。
***
「……危なかったな」
清光が去った後、山姥切が小声で言った。
「……だっぺな」
ギョリイはようやく大きく息をつく。
「どうする?」
今度は長義の声が聞こえた。いつの間にか、彼も近くに来ていたらしい。
「加州清光がどこまで気づいているかはわからないが……このままだと、他の者にも疑われる可能性がある」
「それは……マズいっぺな……」
「主、これ以上の秘密保持は危険かもしれません」
そこへ、へし切長谷部が厳しい表情で現れた。
「場合によっては、本丸全体を巻き込む事態になりかねません」
ギョリイは三人を見渡した。
(オラの正体……いつまで隠し通せるっぺか……?)
しかし、その時——
本丸の警鐘が鳴り響いた。
「……ッ!?」
「敵襲です!」
遠くから、他の刀剣男士の声がする。
「チッ……こんな時に……!」
長義が舌打ちし、長谷部がすぐさま命令を出す。
「主は安全な場所へ! 我々が迎撃します!」
「……いや、オラも行くっぺ!」
ギョリイは固い決意のナマズオの表情を浮かべた。
「こんな時だからこそ、審神者としてやるべきことをやるっぺよ!」
「……!」
山姥切、長義、長谷部は一瞬目を見合わせた後——
「……わかった」
山姥切が刀を握り直し、ギョリイの前に立った。
「だが、絶対に無茶はするな」
「……当然だっぺ!」
ギョリイは自らの本丸を守るため、刀剣男士たちとともに戦場へ向かうのだった——。