もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら
トランプ氏は4日、米FOXニュースのインタビューで、「対中60%関税」について問われ、「それ以上になるかもしれない」と答えた。米紙ワシントン・ポスト(電子版)が先月27日、顧問らと非公式に協議したと報じていたが、本人も認めた形だ。
トランプ陣営は大統領選の選挙公約で、米国に雇用と富を取り戻し、中間層を引き上げる好景気を実現、中国など他国への依存を解消する「トランプ相互貿易法」を掲げている。
陣営のサイトでは「われわれに対する関税を撤廃するか、われわれに数千億ドルを支払うか」「目には目を、関税には関税を、まったく同じ金額を請求する」としている。
前回の大統領在任中の2018年にトランプ氏は、知的財産権の侵害を理由に中国からの輸入品の一部に4度にわたる制裁関税を課すなど、習近平体制と対立した。
トランプ氏は関税により国庫への歳入が増えたという成果を強調するが、中国による報復関税を受けた国内産業に補助金を支出したことに国内では反発もあるという。
第一生命経済研究所の西濱徹主席エコノミストは「トランプ氏は、中国が競争力を持つ太陽電池や風力発電設備、半導体汎用品などに関税をかけようとする可能性がある。その場合、中国もこれらの製品に加え、レアアースやレアメタルのほか、半導体原料のシリコンなどに輸出規制を掛けるなどの報復に出てくると考えられる」と語る。
米国政治に詳しい早稲田大学公共政策研究所招聘研究員の渡瀬裕哉氏は「トランプ氏が当選した場合、各国と交渉した1期目とは異なり、中国中心の交渉になるだろう。バイデン政権は欧州と協調して中国を真綿で首を絞める形だったが、トランプ氏は東アジア地域に軸を置き、より強硬姿勢で対中交渉を行うだろう。その際に日本や韓国、台湾などを利用する可能性もある」とみる。
中国経済の現状は、株式市場が下げ止まらず、国内総生産(GDP)の2~3割を占める不動産市場のバブルが崩壊するなど深刻な状況だ。ここでトランプ氏が大統領に返り咲いた場合、何が起きるのか。米金融大手ゴールドマン・サックスグループが顧客である中国の機関投資家を対象に実施した調査の結果を米ブルームバーグが報じている。
それによると、コロナ禍でロックダウン(都市封鎖)が行われた時期を「0」、制限措置が解除された23年1~3月期を「10」として中国経済の見通しを評価したところ、回答の半数が「0」で、残りの平均は「3」だったという。「第2次トランプ・ショック」は「ゼロコロナ」級だと警戒しているようだ。
西濱氏は「米中摩擦が激化すると、中国への海外からの直接投資額が大きく減少するほか、中国からの輸出にも一段と悪影響を及ぼすだろう。中国企業は国内の生産を諦め、東南アジアなどに拠点を移す可能性がある。海外からの投資も入らず、企業も逃避すると失業率が高止まりせざるを得ない」と話す。
第2次トランプ・ショックにおびえるのは中国だけではない。「米国第一」の保護主義政策を掲げるトランプ氏は、米国への輸入品に原則10%の関税をかけることを打ち出している。米中貿易戦争が激化すれば日本企業が板挟みに合うリスクもある。
西濱氏は「米国が動いた際に日本は追随するのか、日米で分離した議論となるのか、つぶさに見ていく必要がある」という。
トランプ氏は北大西洋条約機構(NATO)からの脱退も主張するなど、安全保障面では孤立主義の傾向も強い。過去には同盟国に防衛費の負担増を求めたこともある。
前出の渡瀬氏は「トランプ氏の求めに応じるために既定路線の防衛力強化は重要だろう。中国を脅す材料として、日本に『核共有』を迫ったり、企業の対中取引の見直し、さらには与党内の親中派の一掃などを求めてくるかもしれない。日本はいまから備えておくべきではないか」と指摘した。