斜里町ウトロでの観光船遭難で、天気が崩れており、捜索も進んでいないとテレビは伝えている。行方不明となっているご家族、関係者の皆さんのお気持ちを察する時、胸が痛む。

 一刻も早く見つけてほしいとただただ願うのみである。

毎日新聞2面、山田孝男特別編集委員のコラム「風知草」は必ず目を通す欄だが、4月18日の「ウクライナ 別の視点」を読者の皆様に全文紹介したい。

 

東京大学の入学式に招かれた映画監督、河瀬直美の祝辞に「ロシアという国を悪者にすることは簡単」という一節があり、「どっちもどっちはおかしい」と批判された(12日)。

 自分の頭で考えよ――という新入生へのメッセージだったと思われるが、ロシアの蛮行に対する非難が弱いと受け取られた。

 とはいえ、戦争の背景を考えることは自由だし、むしろ必要である。実際、フランスの歴史人口学者、エマニュエル・トッドや中国研究者の遠藤誉(ほまれ)が米国の責任を問うている。

 「文芸春秋」5月号(8日発売)にトッドのインタビューが載っている。巻頭の2段組み10ページである。

 見出しは「日本核武装のすすめ」。だが、著者は朝日新聞2006年10月30日付のインタビューで「日本も核兵器を持て」と発言して以来、繰り返しこの趣旨を語っており、タイトル自体に驚きなはない。

 興味深いのは、この論客が「メディアが冷静な議論を許さないフランスでは取材を断っているが、日本は私にとって安全地帯(だから応じる)」と断ったうえで、「戦争の責任は米国とNATO(北大西洋条約機構)にある」と主張していることである。

 彼は、バイデン政権のウクライナ政策を批判する元空軍軍人でシカゴ大教授の政治学者、ミアシャイマーのユーチューブ動画を紹介し、こう指摘した。

 「米欧は『ウクライナのNATO入りは絶対に許さない』というロシアの警告を(反撃せぬとタカをくくり)無視してきた」

「米英はロシアの侵攻が始まる前から、ウクライナへ大量の高性能兵器と軍事顧問団を送り込み、『武装化』を促していた。

 中国研究の論客、遠藤誉の最新刊「ウクライナ戦争における中国の対ロシア戦略」(PHP新書)の帯にこう書いてある。

 「ウクライナは本来中立を目指していた。それを崩したのは09年当時のバイデン副大統領だ。『ウクライナがNATOに加盟すれば、アメリカは強くウクライナを支持する』と甘い罠をしかけ、一方では狂気のプーチンに『ウクライナが戦争になっても米軍は介入しない』と告げて、軍事攻撃に誘いこんだ。

 81歳の遠藤は、少女時代の第二次大戦直後、旧満州国の首都・新京(長春)で被爆して負傷、食糧封鎖に遭い、餓死者の上に野宿して生き延びた。ウクライナ戦争のニュース映像で記憶がよみがえり、震えが止まらず、通院。PTSD(心的外傷後ストレス障害)を克服するため、10日で最新刊を書いたという。

 遠藤は反米主義者ではない。むしろ舌鋒鋭い中国批判が身上だが、「第二次大戦以降の米国の戦争ビジネスを正視しない限り、人類は永遠に戦争から逃れることはできない」との信念から、米国批判に的を絞った文章をヤフーニュースに投稿した(13日)。

 時局柄「ひどいバッシングを受けるのでは」と身構えたが、280万を超えるアクセスがあり、大半は好意的で、「議論を受け入れる土壌ができつつあると感じた」と振り返る。

 ウクライナの事態は平和に慣れた日本人の目を覚まさせた。東アジアの現実は日米同盟を軽視できるほど甘くない。国防の意志と努力が欠かせないが、国際情勢を自ら読み解き戦争ビジネスに加担しない日本でありたい。

 

 世界的歴史学者、私は哲学者とも思っているが、エマニュエル・トッド氏やシカゴ大学教授で国際政治学者ジョン・ミアシャイマー氏は、戦争の要因について分かりやすく指摘している。

 こうした世界に影響力のある人の頭づくり、考えは参考に値するものと考える。読者の皆さんはいかがお受けとめだろうか。