21日夜行われたオンラインによる日米首脳会談で、ロシア、中国を軍事的脅威としたことに対し、在日ロシア大使館、在日中国大使館は、それぞれ反発する談話をだしている。

 当然だろう。ウクライナ問題で、米露外相会談も行われたが、すれ違いのやり取りである。

 ロシアにとって、NATO(北大西洋条約機構)の東方拡大は認められないことであり、アメリカにとってはウクライナ情勢を注視している。

 それぞれの思惑が絡む問題である。冷静に歴史を振り返れば、1989年11月にベルリンの壁が崩壊し、東西冷戦構造が無くなった時、ゴルバチョフソ連大統領はワルシャワ条約機構の国にいるソ連軍を無条件で撤退した。その時、NATO(北大西洋条約機構)の東方拡大はないとの口答約束があった。

 この信頼関係を崩したのはNATOであり、アメリカではないか。原点に(さかのぼ)り、どんな約束があったか検証すればわかる話である。

 アメリカがかつてのように、世界の財政国家、軍事国家、アメリカ一国で世界を支配する時代は終わった。中東からの撤退が良い例である。

 昨年8月17日、アフガニスタンでタリバンがカブールを制圧し、勝利宣言した。その3日前にバイデン大統領は、「アフガン政府は20万人の軍をもっている。タリバンは7万人だ。負けるわけがない」と言ったが、結果はどうであったか。アメリカの見方がいかに正確でなかったか明らかである。

 今、世界が直面しているのは、見えざる敵との闘いである。コロナ(しか)りテロの脅威である。主要国が協力し合い、連携していかなければならない時に、無用の対立はいかがなものか。

 日本には「遠くの親戚より近くの他人」ということわざがある。ロシア、中国、韓国、北朝鮮は隣国である。

 我々個人は、隣に感じが悪い、嫌な人がきたら口もきかなければ、付き合わなくてすむ。どうにもならなければ引っ越しもできる。

 しかし、国と国は引っ越しは出来ない。隣国とは折り合いをつけ、付き合うしかないのである。それが外交である。外交は政府の専権である。外交に携わる司々(つかさつかさ)の人は、心広く、時には忍耐に忍耐を重ね、(したた)かな外交を展開してほしいと願うものである。