今日の朝日新聞4面に私のインタビュー記事が出ているので、紹介したい。

 

「未完の最長政権」第4部⑥「2島」へ転換失敗でない

 

安倍政権はロシアとの北方領土交渉を進めるため、「4島返還」から「2島返還」に方針を転換しました。失敗だったのではないですか。

 その認識は間違いです。2015年12月28日、私は首相官邸に呼ばれ、安倍晋三首相と1時間、面会しました。安倍さんは「日ロ関係を動かしたい」と熱心に話されました。

 具体的には、01年の森喜朗首相とプーチン大統領が出した「イルクーツク声明」をベースに交渉を進めたい、という考えでした。この声明は1956年の「日ソ共同宣言」を平和条約交渉の出発点に設定することを確認した法的文書です。森・プーチン首脳会談には私も同席しています。会談で日本は「歯舞、色丹の引き渡し」と「国後、択捉の帰属問題」に分けて話し合う「同時並行協議」を提案しました。

 プーチン氏は提案に合意しましたが、その後、当時の日本政府がこの提案を覆して「4島一括返還」を主張したため、交渉は頓挫してしまいました。この経緯から、「4島返還」を繰り返しても島は一つも日本に戻ってこないのは自明になりました。

 私は安倍さんに「56年宣言を基礎にするしか解決方法はないですよ」と話しました。安倍さんの対ロ外交は正しかったし、いまでも北方領土問題の解決はこれしかないと思っています。

 ただ、新型コロナウイルスという予期せぬ出来事が起きました。私の知るところでは、安倍さんは昨年5月9日、ロシアの対独戦勝75周年記念式典に出席し、プーチン氏と会談する予定でした。安倍さんが行っていれば、シンガポール合意をもとに平和条約を締結できたと思いますよ。

―領土問題の解決とは別に平和条約を締結するということですか。

 領土問題の解決と平和条約締結はセットですよ。プーチン氏が初めて大統領選に当選した直後の00年4月4日、私は総理特使としてクレムリンで会談し、同年9月に来日した際もお会いしました。そのときプーチン氏は56年宣言の有効性を認めてくれました。だから「イルクーツク声明」にも盛り込まれたんです。それから20年間、プーチン氏の考えは変わっていません。

ですが、シンガポール会談以降、ロシア側は「第2次世界大戦の結果、北方領土はロシアの領土となったと認めなければ進まない」などと繰り返しています。

 裏ではもっと突っ込んだ話を両首脳間でしています。ロシア側が表向きいっているのは、ロシアとしては当然の話。外交はその時々の世界情勢や立場がありますから。

菅義偉政権で北方領土交渉は動くとみていますか。

 昨年8月に安倍さんはプーチン氏と最後の電話協議をしました。「シンガポール会談での約束はこうだよな」と確認しプーチン氏も「そうだ」と答えました。菅首相とプーチン氏の昨年9月の電話協議では、プーチン氏から「シンガポール合意をもとに進める」と。当初は菅さんの方から頼む予定だったんですよ。

 菅さんはバイデン米大統領と会い、対面外交が重要だと認識しました。プーチン氏とも一日も早く対面での首脳会談をすると動き始めます。

(終)

 

 外交には相手があり、日本が100点、ロシアが0点、またその逆もない。お互いの名誉と尊厳を懸けての交渉であり、お互いが良かったといえる決着しかない。

 安倍前総理が敷いたシンガポール合意をもとに、菅総理が乾坤一擲(けんこんいってき)の交渉をしてくれると確信してやまない。

 お昼、大阪で内外情勢調査会(時事通信社)の講演。終了後、伊丹から千歳に向かい、札幌で18時から高橋はるみ参議院議員のセミナーに出席し、挨拶の機会を得る。安倍前総理がゲストで来ておられ、元気そうで何よりであった。

 

※朝日新聞4面「未完の最長政権」第4部⑥「2島」へ転換失敗でない


※高橋はるみ参議院議員のセミナー