伊吹文明代議士が28日引退表明され、私のところにも「さださん、takaさん」始め多くの人から伊吹代議士を称え、残念なメッセージ、電話を沢山戴く。

 昭和58年(1983年)12月初当選同期で大変なご厚情を戴いた。

 筋を通す政治家で、今でも鮮明に想い出すのは、平成8年(1996年)橋本龍太郎総理になり、「沖縄問題と五つの構造改革『行政改革、経済構造改革、金融システム改革、社会保障構造改革、財政構造改革』は、橋本内閣の最重要課題であります」と打ち出した。

 その時、伊吹代議士は「ムネさん、構造改革は国民に痛みを伴う。ここは若い議員を集めて橋本総理を応援しよう」となり、派閥の枠を超えた勉強会「構造改革研究会」を結成した。30人の人数で、伊吹代議士が会長、私が幹事長でスタートし80人程の人数になった。

 橋本総理は100年に一度と言われる省庁再編、行政改革の基本法をまとめ上げた。

あの時、私はいずれ伊吹さんで勝負する時を作ろうと決意したものである。

 ところが平成13年(2001年)小泉政権が誕生し、翌年私は国策捜査に遭い、第一線から離れてしまった。

 政治の世界「タラ」「レバ」はないが、私の失脚がなければ伊吹さんの政治人生も変わっていたのではとこの20年私なりに申し訳なく思っている。

 私が収監中も伊吹さんは私の事務所を励まし、家内、子供達を気遣ってくれ、心から感謝している。

 今日の産経新聞5面「単刀直言」に「議員は責任と謙虚さ失うな 時代合わぬ憲法 改正は国会の仕事」という見出しで、伊吹さんのインタビュー記事がある。

政治家としての(りん)とした姿勢が表れている。その全文を読者の皆さんにご紹介したい。

 

次期衆院選に不出馬を表明した後、「元気なのになぜ」「日本のためもう少し頑張れ」などのお声も頂きましたが、今回頑張っても次回はまた同じ繰り返しになるので、お許しいただきました。私は地元の後援会、事務所スタッフ、家庭に恵まれ、有権者に対する責任を果たせました。しかし、スタッフや家族にこれ以上無理を強いることは、結局、有権者にご迷惑をかけると判断しました。元気な間にしっかりした後継者に引き継ぐのが私の責任でもあります。

野党は共産綱領を見よ

衆院選は4カ月以内にあります。総選挙は政権選択の選挙ですから、与党で過半数なら「勝った」と言えるでしょう。もちろん、現有勢力をどの程度維持できるかは政治的には重要ですがね。

野党の選挙協力はどうですかね。立憲民主党や国民民主党にはぜひ、共産党綱領を読んでもらいたい。2004年と2020年綱領の底流は「反日米同盟」「反資本主義」です。その目的を達成する第一段階が、「民主的勢力」との統一戦線政府の形成です。

近現代史でも、ロマノフ王朝を倒した後に統一戦線政府が成立し、その後、レーニンの共産党政権です。中国共産党も国民党との「国共合作」で日本に対抗し、最終的に毛沢東共産党政権です。一度手を組んだ後に乗っ取るわけですね。共産党は連立政権や選挙協力に熱心ですが、他の野党は綱領や歴史を勉強してほしいものです。

「自助」は立派な理念

政治理念がないと批判する人がいるが、菅義偉首相の「自助・公助・共助、そして絆」は立派な政治理念で、私が書いた自民党綱領の中にある言葉です。与えられた条件の下でおのおのが努力する。その姿があればこそ皆で共助する。それでも埋められないところは皆の負担で公助する。それをつなぐ絆こそ日本の伝統的な規範であり、日本の保守の本質のようなものです。今回の新型コロナウイルス禍でも、日本の人口当たりの感染者数や死亡者数が他の先進国に比べて桁違いで少ないのは、この日本人の生き方が大きいと思います。

菅さんは、コロナという当面の戦いに忙殺され、なかなかその他の問題に取り組めないのは気の毒な気がします。コロナの混乱の中で、選択的夫婦別姓やLGBT(性的少数者)など党綱領に戻って議論すべき話が党内から出てくるのは、政権終盤をのぞいてコロナ禍ではなかった安倍晋三内閣とは違いますね。

憲法改正の議論は国会で活発化させる必要がある。時代に合わなくなったものを改め、追加する憲法改正は、政府ではなく国会の仕事と憲法は定めている。外国での迅速なコロナ対策を野党は引き合いに出すが、その国では緊急時に公益のため、国民の権利や自由を制限できる憲法条項があるから可能なのです。日本国憲法にも緊急事態条項を盛り込むべきかという課題に背を向け、「安倍内閣のもとでの改憲は反対」との姿勢では、国会の役割は果たせません。

回顧談はまだ早い

「政治とカネ」などの問題で国会議員の辞任や離党が相次ぐのは残念なことです。国会議員の責任は、選挙区の主権を預かっていることに尽きます。国民主権と間接民主制が憲法の精神です。かつて「先生と呼ばれたい」「赤坂の料亭に行きたい」などの発言で批判された人もいましたが、本来の責務を自覚していれば、国会議員の仕事は自己抑制の伴う窮屈でしんどいものですよね。

また、中選挙区から小選挙区になり、衆院議員は各選挙区から1人です。自分に投票しなかった人の主権も預かっていることにもなる。最後は多数決ですが、他党の意見にも耳を傾ける責任と謙虚さだけは失ってはならない。

「伊吹氏 政界引退へ」という見出しで報道されましたが、任期中はこの責任を果たし、後継者を当選させるのが私の務めです。任期が終われば、思い出話でも語りましょう。回顧談はまだ早い。

 

 読者の皆さん、是非とも今日の産経新聞「単刀直言」を全文読んで戴きたい。政治家のあるべき姿を示している。

 朝の便で函館空港に行き、渡島管内、函館市を挨拶廻りをする。

 

※今夜20:59~21:54 BS11「インサイドOUTリベラルタイム」に出演します。テーマは「菅政権診断」です。是非ご覧になって下さい。