今日の産経新聞5面「単刀直言」森喜朗元総理だった。「がん、五輪 森元首相が『遺書』21日発売 「JOC もう最悪 小池さん礼儀が…」という見出し記事である。記事の一部を紹介したい。

 

肺がんが進行してね。医者からも「もうあきらめて下さい」と言われてたんですよ。昨年2月頃は髪も抜けてユル・ブリンナーそのものですよ。酸素ボンベがないと3歩歩くだけでハアハアと息が続かない。

 そこで「五輪事業というのが、いかに大変なものかを後世に伝えねば」と思ったんだ。後で「あいつ何してたんだ」と言われるのも嫌だしね。ありのままを書いておかなきゃいかんと。だから当初のタイトルは「遺言」だったんですよ。

 五輪っていうのは誰もが知っているが、実は誰も分かっていないんだな。

 国際社会を相手に事業を取りまとめていくのが大会組織委なんだけど、出向社員・職員ばかりなわけよ。私が会長就任当初は、大多数が「いつ古巣へ戻れるか」という感じで心ここにあらず。セクショナリズムもすごくてトイレに行ってもあいさつもしない。

 これをどう一つにまとめていくか。私の日当を積み立てて盆暮れに懇親会を開いたりして少しずつ人間関係を作っていった。そしてようやくみんなが心から「五輪をやろう」というところにまできたんです。

組織委ってのは、東京都に代わって五輪の実務をやってるんだから都と信頼がなければ絶対にできないんだが、不幸にしてこの4年間に石原慎太郎、猪瀬直樹、舛添要一、小池百合子-と都知事が4人も替わってしまった。

 舛添さんとは呼吸があって、知事室で一緒に弁当を食い、頼まれることもあれば、頼むこともあった。

 だけど、小池さんになってそんなことは1回もない。普通は「都に代わって、ここまでやって下さってありがとうございます」と言うのが礼儀だろうけど、一言もありません。

 もう1つはIOC(国際オリンピック委員会)の実態を知ってもらいたかった。この国際機関を理解するのは本当に苦労した。悪くは言わないけど独特の世界なんです。五輪貴族などと言われてるけど、みんな立派な方ですよ。さすがだと思う。でもその実態にはやっぱり驚いたね。

 その日本支部がJOC(日本オリンピック委員会)なんだけど、こちらはもう最悪。どうしようか迷ったけどこれは書かざるを得ないな。竹田恆和(つねかず)会長は人柄のよい無難な人なんだけど、その側近たちはとにかく組織委の足を引っ張ってばかり。「新参者は入るな」というのが、彼らの思想なんでしょうな。

中略

「遺言」のつもりで書いた手記だけど、昨年2月に新薬を投与したら体調が回復してね。まだ死なないのに「遺言」はどうかなと思って「遺書」に変えたんです。遺書なら早い時期に書いて机の中に入れておいてもおかしくないだろ?

 森元総理の思いが伝わってくる。森元総理は繊細にして気配りの人であり、何よりも人間関係を重んじる人である。

 私も昭和44年中川一郎先生の秘書になり、44年12月に当選してきたのが森元総理だった。それ以来お世話になっているが、変わらざる人間味にいつも感謝している。

 21日発売を楽しみにしたい。