朝日新聞シリーズもので「証言そのとき」、昨日の4面で証券取引等監視委員会前委員長 佐渡賢一氏が不正に臨んだ45年4回目で「『国策捜査』強い逆風 被告が当選 驚いた」というのが出ていた。正確を期すために全文紹介したい。

 

  ひたすら現場で事件を追ってきた検事人生だったが、1997年4月に東京地検刑事部長に就任して以来、一変した。管理職として検事らが効率よく捜査できるようマネジメントに知恵を絞ることになった。

2001年4月、東京地検のナンバー2である次席検事に就任した。捜査や公判の指導、報道対応などを担当し、検察庁全体でみても主要ポストのひとつだ。2年目の02年6月、東京地検特捜部鈴木宗男衆院議員を受託収賄などの容疑で逮捕した。

 口利きで公共事業利権をむさぼる典型的な事件だった。鈴木氏逮捕の前に、側近といわれた元外務省主任分析官の佐藤優氏も逮捕した。外務省のロシア関係の資金不正使用にからむ背任容疑だ。

 支出を決裁した上司の局長が海外に逃亡して取り調べができなかったのが気にかかった。だが、国後島の「日本人とロシア人の友好の家」の入札不正など外務省がらみの疑惑の全体像を解明するには、佐藤氏の逮捕が必要だと判断した。

 佐藤氏は著書「国家の罠」で、一連の捜査は鈴木氏を陥れるための「国策捜査」だと訴えた。同書はベストセラーとなり、賞も受賞。以後、検察は政界捜査で、たびたび「国策捜査」との批判を浴びるようになる。

 「国策」という発想はまったくなかった。だが、驚いたのは、公判で犯罪事実の詳細が明らかになり、それが大きく報道されたにもかかわらず、鈴木氏が05年秋の総選挙で当選したことだ。

 私の古里でもある北海道は、厳しい自然の中で開拓した歴史があり、不正には厳しい土地柄だ。それなのになぜ、と思った。それまでテレビ局や週刊誌が公判中の被告人の言い分をそのまま取り上げることはなかったと思うが、鈴木氏には堂々と検察批判を語らせていた。

 検察側にも問題があった。

 鈴木氏の逮捕2カ月前、大阪地検が、検察の調査活動費流用疑惑を告発しようとした三井環・大阪高検公安部長を逮捕した。三井氏は元暴力団組員から接待を受けたなどとして収賄罪などで起訴されたが、検察は疑惑隠しのために捜査権を使ったのではないか、と厳しい批判を浴びたのだ。

 大阪の事件と鈴木氏の事件は全く関係なかったが、「私の事件は国策捜査」「検察側の一方的なつくり話だ」とした鈴木氏の主張が一定の説得力を持ったようだ。検察にとって今につながる逆風の始まりだった。

 佐渡氏に聞きたい。あなた方は最初、外務省関係、中でも北方領土・人道支援・ディーゼル発電所・友好の家・アフリカODAについて私を事件化出来ないか動いていたのではないか。

 それが出来なくて平成10年、釧路地方検察庁が「やまりん伐採問題」で私の関与を立件しようとしたが、私が何もしていないので事件化出来なかった。

 それを贈賄側が3年の時効になったのを機に時効直前に「お前たちは何を言っても罪にならない、こちらの狙いは鈴木宗男だ」と、やまりん側に圧力をかけ事件にしたのではないか。反論があるなら是非ともしてほしいものだ。

 調書、至上主義で、密室で検察側のシナリオ・ストーリーに乗せられて作られた調書でなかったか。

 今、やまりん関係者も、島田関係者も「検察に言わされました。誘導されました」と正直に言ってくれている。

 さもさもの様に正義の行使者というような言い振りに強い嫌悪感を覚える。

 何が真実か、正直者が馬鹿を見ない社会にしなくてはと改めて決意するものである。