週末、北海道で活動していると話題は日露首脳会談で、私にもテレビ、ラジオ局からインタビュー、出演の依頼が入る。日露首脳会談が大きく注目され、新しい一歩を安倍首相は記した。

元島民も11月のペルー・リマでのAPEC(アジア太平洋経済協力)首脳会議での首脳会談、12月15日の山口県長門市での首脳会談に大きな期待をしている。

 安倍総理は2日、首脳会談後の記者のぶらさがり質問で次のように述べている。特に平和条約については、2人だけでかなり突っ込んだ議論を行うことができたと思う。新しいアプローチに基づく交渉を今後、具体的に進めていく、その道筋が見えてきた。その手応えを強く感じ取ることができた会談だったと思う。70年以上にわたって平和条約が締結をされていないという異常な状況を打開するためには、首脳同士の信頼関係の下に解決策を見いだしていくしか道はないと思います」と述べている。

 3日の東方経済フォーラムでも安倍総理はこのままでは、あと何十年も同じ議論を続けることになってしまう。ウラジミール、私たちの世代が勇気を持って責任を果たしていこう。日露の新たな時代を切り開いていこう」と演説し、プーチン大統領は笑顔で頷き、拍手していたという。

 国境画定、領土問題解決はトップリーダーの決断しかない。安倍総理、プーチン大統領、共に高い国民の支持がある。この環境の中で歴史は創られるのである。

 北方領土について政府の基本方針は「北方四島に対する日本の主権が認められるならば、実際の返還の時期、態様、条件については柔軟に対処する」である。また、1993年10月の東京宣言では「四島の帰属に関する問題を解決して平和条約を締結する」となっている。

 今回、北方四島に対する主権確認を平和条約の条件としたり、東京宣言についても触れなくなった。これがまさに「新しいアプローチ」である。

 そしてプーチン大統領もフォーラムの質疑の中で、北方領土問題について「双方が敗者と感じない解決方法が必要だ。私たちはこのような例をつくれる」と述べ、更に1956年の日ソ共同宣言にも言及し「それは問題を完全に終わらせる条約だ」と述べている。また、プーチン大統領は「1956年の日ソ共同宣言は両国の国会(当時、ソ連は最高会議)が批准した法的拘束力を持つものだ」とも述べている。

 「引き分け、はじめ」「双方が敗者と感じない解決方法」発言とプーチン大統領の考えはブレていない。

 現実的解決に向けて、まさに知恵の出しどころである。外交で一方が100点で一方が0点という外交はない。先ずは、お互いの名誉と尊厳を守る形でスタートするしかない。

 そして未来志向で、名を捨ててでも実を取るかが勝負どころではないか。安倍総理を支える外務官僚は、国益の観点から乾坤一擲(けんこんいってき)の努力をしてほしいものである。