東京スポーツマンデー激論、佐藤優さんの「日本が核武装できない決定的な理由」というコラムが興味深い。

読者の皆様にも全文ご紹介したい。

『東京スポーツ』2016年4月4日発売号

佐藤優(作家・元外務省主任分析官)

マスコミでの扱いは小さいが、1日の閣議で安倍政権は、日本の安全保障政策に大きな影響を与える閣議決定を行った。NHKの報道が詳しく、正確なので、少し長くなるが正確に引用しておく。
<政府は1日の閣議で、核兵器の保有や使用について、「憲法9条は一切の核兵器の保有や使用をおよそ禁止しているわけではない」とする一方、非核三原則やNPT=核拡散防止条約などにより「一切の核兵器を保有し得ない」などとする答弁書を決定しました。/この答弁書は無所属の鈴木貴子衆議院議員が提出した質問主意書に対するものです。/質問主意書では横畠内閣法制局長官が先月18日の参議院予算委員会で、「憲法上、あらゆる種類の核兵器の使用がおよそ禁止されているとは考えていない」と発言したことを踏まえ、核兵器の保有や使用についての政府の見解をただしています。/これに対して、答弁書は「純法理的な問題として、憲法9条は一切の核兵器の保有や使用をおよそ禁止しているわけではないと解されるが、保有や使用を義務付けているものでないことは当然だ」としています。/そのうえで、「核兵器の保有や使用をしないとする政策的選択を行うことは憲法上何ら否定されていない。現に、わが国は、そうした政策的選択のもとに非核三原則を堅持し、原子力基本 原子力基本法やNPT=核拡散防止条約により一切の核兵器を保有し得ないこととしている」としています。>(1日、NHK NEWSWEB)
質問主意書に対する答弁書は、閣議決定を必要とするので、政府の立場を拘束する。従来より政府は核兵器の保有は合憲であるとの立場を取っていたが、核兵器の使用も合憲であるとの方針が閣議決定されたのは初めてのことだ。中東、朝鮮半島で核拡散の動きがあることを踏まえ、日本としても憲法上、核兵器使用の可能性を放棄したわけではないという立場を表明することで、抑止力を強めようとしているのであろう。しかし、現実には日本が核兵器を保有することも使用することもできない。なぜなら、日本には原子力発電所があるからだ。核拡散防止条約に日本は核兵器の非保有国として参加することを条件に原子力発電を認められている。日本の核兵器保有と使用の歯止めとして、原発が果たしている役割に気付いていない有識者が多いのは驚きだ。(2016年4月2日脱稿)

佐藤優さんの認識に頷(うなず)くとともに横畠法制局長官の3月18日の参議院予算委員会の答弁に国民から選ばれた国会議員はもっと反応しても良いと思うのだが、基礎体力があるかないか心配である。読者の皆さんはいかがお考えだろうか。