11月3日のムネオ日記で、秋の叙勲でアメリカの国務副長官や大統領補佐官が昔の勲一等にあたる旭日大綬章を受賞していることについて書いたが、11月6日付東京新聞「こちら特報部」(24面)も触れている。全文紹介したい。



「政権の意向」を反映?

秋の叙勲受章者が3日に発表された。叙勲対象は、日本人だけではなく外国人も。かつては東京大空襲を指揮し、広島・長崎への原爆投下作戦に係った米空軍の司令官カーチス・ルメイ氏(故人)も受章した。今回も米国の大物政治家らが名を連ねたが、外国人受章者はどんな意図で選ばれているのか。

外国人の受章者は今回、89人。目を引くのが、知日派で「ジャパンハンドラーズ」と称される米国の元国務副長官アーミテージ氏と、イラク戦争を主導した元国務長官ラムズフェルド氏だ。「日米の関係強化と友好親善に寄与した」として、2人はともに旭日大綬章に選ばれた。

旭日章は6段階に分かれており、旭日大綬章は最上位。今回、日本人では、閣僚経験者のほか、産経新聞社の清原武彦元社長や東北電力の幕田圭一元社長らが受章した。内閣府賞勲局の担当者は「同じ勲章なら外国人と日本人で重みは変わらない」と説明した。

内閣府によれば、1875年の「勲章従軍記章制定ノ件」公布で勲章制度が始まり、88年に外国人対象の制度も設けられた。現在は「外国人叙勲」と呼ばれ、国賓や駐日大使、日本との友好関係に功績のあった人らに贈られる。

日本人の場合、各省庁のトップが候補者を推薦し、賞勲局の審査や閣議決定をへて受章者が選ばれる。「国家または公共に対し功労のある者」が対象で、人生全体で評価するため、原則として70歳以上の推薦が求められている。

外国人は、外務相が推薦する。在外公館などを通じて情報を集め、対象者はおおむね50歳以上。日本で暮らす外国人の場合はおおむね65歳以上で、日本人よりやや若い。

これまでの外国人受章者は、首相や閣僚経験者、大学の日本研究者、映画監督、女優、漫画家ら。「硫黄島からの手紙」で監督を務めたクリントン・イーストウッド氏、Jリーグの名古屋グランパスで選手・監督だったストイコビッチ氏らに贈られた。

今回は、プロ野球の王貞治氏が抜くまで世界一の本塁打記録を持っていた元大リーガー、ハンク・アーロン氏が旭日小綬章を受章。「野球を通じた青少年交流、日米の友好親善に寄与」したことが理由だ。

外国人の受賞はここ数年、春秋に各50人前後だったが、今年は春秋ともに80人台。賞勲局担当者は「功績のある人を積極的にたたえ、後に続く人を増やしていきたい。今のペースを維持できれば」と言う。

元外務省国際情報局長の孫崎享一氏は、その必要性を認めつつ、外国人への叙勲に「政治的な意図が絡むことは少なくない」と指摘する。「日本に影響力を持つアーミテージ氏らを選んだ判断からは、過剰な配慮がうかがえる。米国内で決して評価が高いと言えない人物。国際的には、奇異にみられることもあるだろう」

ちなみに、ルメイ氏には1964年、勲一等旭日大綬章が贈られた。当時の首相は故佐藤栄作氏。安倍晋三首相の大叔父だ。「航空自衛隊の育成に貢献した」という理由からだった。

ところで、今回ではないが、春には政府高官ではなく、「元課長」のドイツ人が受章した。連邦司法・消費者保護省裁判所構成法等担当課長だったハラルド・ライヘンバッハ氏。「個人レベルで長年、司法関連の調査やシンポジウムで日本側に協力された方。その功績をたたえてのもの」(賞勲局担当者)だという。



さすが、「こちら特報部」である。何を持って選んだのか賞勲局は国民に説明するのが親切ではないか。