政府がやっと昨日、TPP(環太平洋経済連携協定)大筋合意の全容を公表した。6日に合意してから2週間も経ってのことである。

聖域として「守る」と言った農産品重要5項目、586品目で174品目が関税撤廃である。なんとその率は3割に達する。

更に農林水産物2328品目のうち、段階的に81%が撤廃となり、即時、撤廃は51%になる。これで交渉は上手く行ったと言えるのだろうか。

「19%の関税を守れたのは参加国の中では高い数字だ」と政府は言うが、それならば国民の税金を使う「対策本部」を何故設置する必要があるのか。言っていることと、やっていることが違うのではと感じるのは私だけではないだろう。

読者の皆さんに今一度、衆・参両院の農林水産委員会での決議内容をお示しした。


一 米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物などの農林水産物の重要品目について、引き続き再生産可能となるよう除外又は再協議の対象とすること。十年を超える期間をかけた段階的な関税撤廃も含め認めないこと。


二 残留農薬・食品添加物の基準、遺伝子組換え食品の表示義務、遺伝子組換え種子の規制、輸入原材料の原産地表示、BSEに係る牛肉の輸入措置等において、食の安全・安心及び食料の安定生産を損なわないこと。


三 国内の温暖化対策や木材自給率向上のための森林整備に不可欠な合板、製材の関税に最大限配慮すること。


四 漁業補助金等における国の政策決定権を維持すること。仮に漁業補助金につき規律が設けられるとしても、過剰漁獲を招くものに限定し、漁港整備や所得支援など、持続的漁業の発展や多面的機能の発揮、更には震災復興に必要なものが確保されるようにすること。


五 濫訴防止策等を含まない、国の主権を損なうようなISD条項には合意しないこと。


六 交渉に当たっては、二国間交渉等にも留意しつつ、自然的・地理的条件に制約される農林水産分野の重要五品目などの聖域の確保を最優先し、それが確保できないと判断した場合は、脱退も辞さないものとすること。


七 交渉により収集した情報については、国会に速やかに報告するとともに、国民への十分な情報提供を行い、幅広い国民的議論を行うよう措置すること。


八 交渉を進める中においても、国内農林水産業の構造改革の努力を加速するとともに、交渉の帰趨いかんでは、国内農林水産業、関連産業及び地域経済に及ぼす影響が甚大であることを十分に踏まえて、政府を挙げて対応すること。

右決議する。


この決議に沿って交渉したかどうか、国民から選ばれた国会議員は与野党とも胸に手を当てて真摯に考えて戴きたい。

これまでも政治に翻弄(ほんろう)され、苦労してきた第一次産業従事者を困らせる、悲観させる後継者が育たない政治はまっぴらである。

一日も早く国会召集し、将来に向けての議論をすべきでないか。

TPP・安保法制・外交等、山積する諸問題がある中で国会を召集しないのは言語道断である。

政府・与党は堂々と受けて立つべきである。