元裁判官で袴田事件の1968年、一審死刑判決の裁判官の一人であった熊本典道氏が毎日新聞の取材で、他の二人の裁判官は「自白調書がないと死刑にはできない」として起訴当日に静岡地検検事が作成した調書一通を証拠採用することを強く主張し、この調書で死刑が下されていると話している。熊本氏は以前から公の場で「自分は無罪の心証だった」と発言している。
私も何度か熊本氏に会ったことがあり、直接聞く機会もあった。
 恐ろしいことである。強圧的取り調べで更に誘導し、事実でないことを言わせ、デタラメの調書を警察・検察は作り、袴田さんを陥れた。
警察・検察の恣意的・意図的なやり方に改めて憤りを感じるものである。
 読者の皆さんも他人事(ひとごと)と思わず、間違った権力が暴走すると「明日は我が身」ということを考えて戴きたい。
冤罪をなくす為には取り調べの可視化を実施するのが必要であることをお分かり戴きたい。
 それにしても48年間も袴田さんを拘束し続け、しかも死と向き合わせた検察・警察の罪は重大であり一日も早く再審開始をし、はれて袴田さんの無実を勝ち取らなくてはならない。
 19日、後楽園ホールで行われたボクシングのイベントでWBC(世界ボクシング評議会)から名誉チャンピョンベルトが贈られ、ファイティングポーズをとる袴田さんの姿があった。
 「権力に勝って自由になったんだ」というパンチのきいた袴田さんの言葉にグッと胸にくるものがあった。
 私も再審請求中だが、袴田さんを見習って闘って参りたい。
 7時過ぎ発の新幹線で岐阜に向い、3か所で講演を行う。
久し振りの岐阜だが、人間関係は有難いとつくづく思うものである。