ウクライナ情勢が連日報道されている。報道からロシアが一方的に軍事行動を起こしていると短絡的に受け止める向きが出ることを私は懸念する。
 2月24日の段階で佐藤優氏は次のような分析をしている。ウクライナ情勢を考える時、必要最低限の基礎的背景として読者の皆さんにお伝えしたい。

「現在、ウクライナで進行している事態は革命である。特に、地方でのロシア語の公用語化を認める法律を廃止したことが重要だ。この決定は、革命政権が、ロシアと距離を置き、欧米に接近する路線を選択したことを意味しているからだ。
 今回の革命の背景には、歴史的、文化的に根深い対立構造がある。反政権側は、西ウクライナ(ガリツィア地方)に基盤を置く民族主義勢力である。帝政ロシア時代、ウクライナは小ロシアと呼ばれていた。現在も、ウクライナ人で、自分は広義のロシア人という自己意識を持っている人も、東部、南部には少なからずいる。
 これに対して、ガリツィア地方と呼ばれる西部は、歴史的にハプスブルグ帝国の版図で、同帝国解体後はポーランドに属していた。ガリツィア地方がソ連領ウクライナと統合されるのは第二次世界大戦後のことだ。ガリツィア地方のウクライナ人は日常的にウクライナ語を話す。これに対して、東部、南部、中央部のウクライナ人は日常的にロシア語を話す。ウクライナ人の大多数は正教徒だが、ガリツィア地方のウクライナ人はカトリック教徒が多数派だ。この地方の人々はロシアを嫌いEUとの統合を強く望んでいる。
 東部を基盤とする軍産複合体、宇宙産業、またロシア人との複合アイデンティティを持つウクライナ人は、ウクライナがNATO(北大西洋条約機構)に飲み込まれることになるのではないかという強い危機感を抱いている。2月23日にソチ冬季五輪が閉幕する
までは、国際世論に対する配慮から、ロシアは、ウクライナに対する露骨な干渉を行わなかった。しかし、今後は干渉を強める。それは、ウクライナに親欧米政権が樹立されて、NATOに加盟するような事態になれば、ロシアの軍事、宇宙産業に関する機密情報がすべて米国に流れてしまうからだ。
 ウクライナ情勢の緊迫化は、日本外交にも影響を及ぼす。米国は日本にも対露牽制に加わることを求めてくるであろう。ここで日本が米国に完全に歩調を合わせると、プーチン大統領は、日本に対する不信感を持つようになる。その結果、プーチン大統領と安倍晋三首相の信頼関係を強化する中で北方領土問題を解決するというシナリオに翳りが生じかねない。」


 ウクライナにおいて歴史的・文化的な対立があったことを知ったうえで今起きていることを考えるべきである。
 ロシアの介入とか、不当な軍事行動とか軽々に判断するのはウクライナの歴史・文化を知らないことになる。
 昨日の予算委員会で安倍首相は「すべての当事者が自制と責任を持って慎重に行動し国際法を完全に順守し、領土の一体制を尊重することを強く求める」と述べている。配慮した言い方だが、前段の発言で止めておくべきで、国際法うんぬんからの後段はいらなかったのではないか。
 欧米・ロシア双方の立場を考えてのことだが、欧米と日本が決定的に違うのは北方領土問題があることだ。そしてエネルギー資源なき日本が地政学上からも将来ロシアのエネルギー資源を必要とするからだ。
 欧米に引きずられるのではなく、むしろ欧米とロシアの橋渡し、仲立ちをする位の外交を展開してほしいものである。
 朝、大阪伊丹空港から千歳に飛び、札幌でJR北海道元社長の坂本眞一さんのお別れ会に出席。京都駅の助役時代より野中広務先生と親しく野中先生の紹介でご厚情を賜った。心からのご冥福をお祈りする。
夕方の便で東京に戻る。