毎週注目している東京新聞金曜日の27面、大宅壮一賞作家 佐藤優さんの本音のコラム、11月1日は「稚拙な政策広報」という見出しで次のように書かれている。

 外務省に政策広報という業界用語がある。国際基準でいう政治プロパガンダ(宣伝)のことだ。政策広報に関しては、国内向け、係争を抱える対象国向け、第三国向けで、内容や表現の仕方を区別した入念かつ繊細なアプローチが不可欠だ。外交官時代、筆者はロシア語の政策広報小冊子『真の相互理解に向けて』の作成に関与した(原案は筆者が書いた)。そこでは、ロシア人の心情に最大限配慮し、北方領土問題に関する日本政府の方針を高飛車に述べることは避けた。日露の提携を推進することが両国の国益と国際社会の安定に貢献することを強調し、そのために領土問題を解決しなくてはならないのではないか、と問いかける内容にした。この小冊子は、ロシアの政治エリートに「日本が本気で関係改善を望んでいる」というメッセージを伝えることに成功し、01年3月のイルクーツク声明に結実する森喜朗首相・プーチン露大統領間の信頼情勢に貢献した。
 10月23日、外務省は尖閣諸島、竹島が日本固有の領土であることを説明する動画を同省HPに公表したと発表した。今後、中国語、韓国語、英語など10言語の動画を作成する。筆者も動画を見たが、これは第三国向けだ。こんな稚拙な内容で中国人、韓国人の心を掴むことができると外務官僚は思っているのだろうか?

 私も動画を見たが、このような広報でどのような理解、効果があるか首を傾げざるを得ない。
 歴史的説明をしても現に竹島は韓国に実効支配されている。領土問題は国家主権にかかわる問題である。
 昭和53年、竹島に韓国がヘリポートを作り始めた時、政府外務省はどんな対応だっただろうか。
 1965年6月22日の「日本国と大韓民国との間の紛争の解決に関する交換公文」をどう受け止めていたのだろうか。
 尖閣諸島は日本が実効支配している。政府は尖閣について領土問題はないといっている。それならば何故、今頃になって動画なのか。尖閣を領土問題化させようとする中国の動きを利するだけではないか。大事な国家主権に関する問題でチグハグな感じがする。これが問題ではないか。
 動画がどんな効果があるのかしばらく様子を見たい。読者の皆さんも一度見てどんな感想、受け止めをしたか知らせて戴ければ幸いである。
 朝、青森三沢空港から東京に戻り、党本部で仕事をし、夕方北海道に飛ぶ。28日から一週間毎日飛行機に乗ったことになる。便利な時代だと思いながらも日々動けることに感謝したい。
鈴木宗男