3.空中に現れて、文字を書き記す手
三つ目の、そして最後の崩壊の瞬間は、新バビロニア最後の王ベルシャザルを襲った恐怖の戦慄だ。
ベルシャザルは、聖書によればネブカドネザル王の子となっているが、実はネブカドネザル王の三世代後の人物で、しかも血のつながりはないということだ。またベルシャザルは、聖書では王と呼ばれているが、実は王ではなく、父王のナボニドゥスから、バビロンの統治を任されていただけだったようだ。
それはともかく、聖書のダニエル書によれば、彼はあるとき、バビロンの宮殿で大宴会を催した。その宴会には、千人もの貴族や、後宮の女たちが招かれていた。
その宴会がたけなわになって、みんな酔いが回ってきたとき、ベルシャザルは、あることを思いついた。ネブカドネザル大王がエルサレムの神殿から金や銀でできた盃を奪い取ってきたが、それで酒を飲もうというのだ。自分の王国の偉大さを、みんなに見せようとしたのかもしれない。それで早速、宝物蔵からそれを取り寄せ、その盃でみんなに酒を飲ませた。そして、王国の神々の像をたたえながら、乾杯を重ねた。
このようにして、彼らは、エルサレム神殿の礼拝に使われていた祭具で、酒を飲むという罰当たりをしていた。
すると、「その時、人の手の指が現れて、ともし火に照らされている王宮の白い壁に文字を書き始めた。王は書き進むその手先を見た。王は恐怖にかられて顔色が変わり、腰が抜け、膝が震えた。王は大声をあげ、祈祷師、賢者、星占い師などを連れて来させ、これらバビロンの知者にこう言った。『この字を読み、解釈をしてくれる者には、紫の衣を着せ、金の鎖を首にかけて、王国を治める者のうちの第三の位を与えよう。』宮廷の知者たちは皆、集まって来たが、だれもその字を読むことができず、解釈もできなかった。ベルシャツァル王はいよいよ恐怖にかられて顔色が変わり、貴族も皆途方に暮れた。」(ダニエル書5章5-9節)
こういう混乱状態の中、王妃がある助言をベルシャザルに申し出た。それは、ネブカドネザル王のとき、ユダ王国から捕囚としてバビロンに連れてこられたダニエルという者がいる、彼は神のごとき知恵を持っており、大王もダニエルを信頼し、重く用いていた、彼はまだ生きている、このダニエルを招けば、この不思議な文字を読み解いてくれるかもしれない、というのだった。
そこでダニエルは王宮に呼ばれた。ダニエルは、白い壁に書かれた文字を見ながら、ベルシャザルに向かってこう言った。「もちろん、王よ、あなたさまのためにこの文字を読み解いてさしあげます。しかし、思い出してください。あなたの先代のネブカドネザル王は、その権勢の極みのときに、心がおごり高ぶり、傲慢となられました。その傲慢の罪の報いとして、神は、大王の心を惑わし、人間の世界から彼を追放されました。その経験から大王は、神への畏れと謙遜を学ばれたのです。その実例を知っていながら、ベルシャザル王よ、あなたは学ぶことなく、傲慢となり、神への畏れをないがしろにされました。あなたは、神にささげられた祭器で宴会の酒を飲むという冒涜を犯しました。神をも畏れぬあなたの高慢のゆえに、神はあの手を顕わして、あなたとこの国に対する審判を書き記させたのです。
書き記された文字の読みとその意味はこうです。メネ、メネ、テケル、そして、パルシン。意味はこうです。メネは数えるということで、すなわち、神はあなたの治世を数えて、それを終わらせられたのです。テケルは量を計ることで、すなわち、あなたは秤にかけられ、不足と見られました。パルシンは分けるということで、すなわち、あなたの王国は二分されて、メディアとペルシアに与えられるのです。この決定はもはや取り消すことのできないもので、すぐにも実現します。」
ベルシャザル王はこれを聞くと、もう一度戦慄し、青ざめた。そして運命の宣告に絶望し、がっくりと肩を落とした。それでも約束通り、彼はダニエルに紫の衣を着せ、金の鎖を首にかけてやった。そして、王国を治める者のうちの第三の位を与えることを宣言した。ダニエルは宮殿を立ち去った。
その直後反乱がおこり、新バビロニア帝国の首都バビロンは崩壊した、そしてその混乱の中、カルデア人の王ベルシャザルは殺された。
私がここで描きたかった場面とは、宴会の最中空中に突然手だけが現れて、ともし火に明るく照らし出された白い壁に、不思議な文字を書きだした瞬間と、その光景を見たベルシャザル王を襲った戦慄と恐怖だった。
(終わり)
三つ目の、そして最後の崩壊の瞬間は、新バビロニア最後の王ベルシャザルを襲った恐怖の戦慄だ。
ベルシャザルは、聖書によればネブカドネザル王の子となっているが、実はネブカドネザル王の三世代後の人物で、しかも血のつながりはないということだ。またベルシャザルは、聖書では王と呼ばれているが、実は王ではなく、父王のナボニドゥスから、バビロンの統治を任されていただけだったようだ。
それはともかく、聖書のダニエル書によれば、彼はあるとき、バビロンの宮殿で大宴会を催した。その宴会には、千人もの貴族や、後宮の女たちが招かれていた。
その宴会がたけなわになって、みんな酔いが回ってきたとき、ベルシャザルは、あることを思いついた。ネブカドネザル大王がエルサレムの神殿から金や銀でできた盃を奪い取ってきたが、それで酒を飲もうというのだ。自分の王国の偉大さを、みんなに見せようとしたのかもしれない。それで早速、宝物蔵からそれを取り寄せ、その盃でみんなに酒を飲ませた。そして、王国の神々の像をたたえながら、乾杯を重ねた。
このようにして、彼らは、エルサレム神殿の礼拝に使われていた祭具で、酒を飲むという罰当たりをしていた。
すると、「その時、人の手の指が現れて、ともし火に照らされている王宮の白い壁に文字を書き始めた。王は書き進むその手先を見た。王は恐怖にかられて顔色が変わり、腰が抜け、膝が震えた。王は大声をあげ、祈祷師、賢者、星占い師などを連れて来させ、これらバビロンの知者にこう言った。『この字を読み、解釈をしてくれる者には、紫の衣を着せ、金の鎖を首にかけて、王国を治める者のうちの第三の位を与えよう。』宮廷の知者たちは皆、集まって来たが、だれもその字を読むことができず、解釈もできなかった。ベルシャツァル王はいよいよ恐怖にかられて顔色が変わり、貴族も皆途方に暮れた。」(ダニエル書5章5-9節)
こういう混乱状態の中、王妃がある助言をベルシャザルに申し出た。それは、ネブカドネザル王のとき、ユダ王国から捕囚としてバビロンに連れてこられたダニエルという者がいる、彼は神のごとき知恵を持っており、大王もダニエルを信頼し、重く用いていた、彼はまだ生きている、このダニエルを招けば、この不思議な文字を読み解いてくれるかもしれない、というのだった。
そこでダニエルは王宮に呼ばれた。ダニエルは、白い壁に書かれた文字を見ながら、ベルシャザルに向かってこう言った。「もちろん、王よ、あなたさまのためにこの文字を読み解いてさしあげます。しかし、思い出してください。あなたの先代のネブカドネザル王は、その権勢の極みのときに、心がおごり高ぶり、傲慢となられました。その傲慢の罪の報いとして、神は、大王の心を惑わし、人間の世界から彼を追放されました。その経験から大王は、神への畏れと謙遜を学ばれたのです。その実例を知っていながら、ベルシャザル王よ、あなたは学ぶことなく、傲慢となり、神への畏れをないがしろにされました。あなたは、神にささげられた祭器で宴会の酒を飲むという冒涜を犯しました。神をも畏れぬあなたの高慢のゆえに、神はあの手を顕わして、あなたとこの国に対する審判を書き記させたのです。
書き記された文字の読みとその意味はこうです。メネ、メネ、テケル、そして、パルシン。意味はこうです。メネは数えるということで、すなわち、神はあなたの治世を数えて、それを終わらせられたのです。テケルは量を計ることで、すなわち、あなたは秤にかけられ、不足と見られました。パルシンは分けるということで、すなわち、あなたの王国は二分されて、メディアとペルシアに与えられるのです。この決定はもはや取り消すことのできないもので、すぐにも実現します。」
ベルシャザル王はこれを聞くと、もう一度戦慄し、青ざめた。そして運命の宣告に絶望し、がっくりと肩を落とした。それでも約束通り、彼はダニエルに紫の衣を着せ、金の鎖を首にかけてやった。そして、王国を治める者のうちの第三の位を与えることを宣言した。ダニエルは宮殿を立ち去った。
その直後反乱がおこり、新バビロニア帝国の首都バビロンは崩壊した、そしてその混乱の中、カルデア人の王ベルシャザルは殺された。
私がここで描きたかった場面とは、宴会の最中空中に突然手だけが現れて、ともし火に明るく照らし出された白い壁に、不思議な文字を書きだした瞬間と、その光景を見たベルシャザル王を襲った戦慄と恐怖だった。
(終わり)