" 造形の師匠" との出会い PART 1 | 特撮PROP COLLECTION

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特撮ヒーローのマスクや小道具などについて呟いて行きます。



「ギャラリー&カフェ アーティスト」での出来事の続きです。
今回のタイトルの "造型の師匠" と会わせて頂いたのが
このお店でした。

コーヒーを飲みに立ち寄ったある日、
店長(M藤さんの奥さん)に
   「店にたまに来てくれるT映の美術の人が、
      会いたいって言ってるんだけど、、。」
と言われたのです。



当時、店長に "ウルトラマンのマスク"(前出のレプリカマスクです)
を展示品として渡していたのですが、
そのマスクをT映の美術の方に見せたらしいのです。
自分は一瞬背中を冷や汗が流れました。
無防備にこういったレプリカを渡してしまっていた事を
後悔しました。
考えられるパターンとして、版権についての説教をされるとか、、。
若しくはマスクの出所や流通に関して聞かれたりするかも、
といった考えが頭の中を駆け巡りました。

しかし、店長の話だと、ただ単純にこういったレプリカマスクを
作る人(素人)に会ってみたいということでした。


そして迎えた出会いの日、、。


自分は初めてこういうプロの人に会うのでかなり
緊張していました。
紹介された方は「T映特撮研究所」の美術監督をされている
"Kさん" という方でした。
初対面の印象は "気さくな人" でした。
ちょっと小太りで、にこやかな笑顔をたたえていました。

この方のプロフィールはけっこう変わっていて、
元々は出版関係の会社を経営していたのですが、
それがうまく行かなくなって、

次に選んだ職業が「装美社」での小道具作り。
当時Kさんは"スケバン刑事"にハマっていて、その小道具を作る
ノウハウを知りたい というのが目的だったようです。
(実際に撮影に使用したヨーヨーや鉄仮面なんかも所有してました。)
下の写真は後年販売されたレプリカです。






その後、特撮研究所からお声が掛かって、 そこに入ったという
経緯でした。
そんな人が、何故自分に会いたがるのか不思議でした、、。



実はKさんも " マスクコレクター " だったんです。



T映の中に特撮研究所があるので、マスク自体はT映から
こっそり借りれたらしいんです。(あくまで、当時は、、です。)
倉庫を管理していた中村さん(現在は亡くなられております)と
懇意にしていて、気に入ったマスクなどを貰える機会も
あったようです。

Kさんは当時、独りでコレクションをしていたので
どうしても集まらない (T映に残っていない) マスクがありました。
例えば、バロム1とか変身忍者 嵐とか、、。
その頃、その辺のマスクは労せず入手出来たマスクなので、
好意でKさんに あげたりしました。
その後も、彼が欲しいというマスクがあれば抜いて渡していました。

その当時の自分のFRPの抜きの技術は、
プロの技術にはとても及ばない下手くそな物でした。
気泡や欠け、グラスウールも均等に入っていないという
酷い代物でした。
まず、グラスウールはそのままの厚さで積層してしまっていたので、
複雑な形の物にはお手上げな感じでした。
揉むとか剥がすなんていう知識も皆無でしたから、、。
(でも、今ヤフオクとかで出ているマスクよりはマシだったかも)
素人の工作ですからこんな物なんでしょうけど、
やはり上を目指したいという意識から、
Kさんにノウハウを教えて貰う事になりました。
何度も何度もマスクを抜いて、ダメ出しをされ、また抜いての
繰り返しに、もう嫌になって来た時期もありました。
が、しかし、間違い無く技術は向上していきました。

それからしばらく経って、造形家の三枝氏が自分の抜いた
ライダーマスクを見る機会があったらしいのですが、
「これは、プロの抜きだね、、。」とおっしゃっていたそうで、、。
これはかなり嬉しかったですね。
苦労した甲斐がありました、、。

だからあまり適当な抜きのマスクを見ると、「もっと頑張れよ!!」と
思ってしまいます。
必要なのは " 才能 " ではなく、 " 丁寧さ " だからです。


色々な意味でKさんは自分の造型の師匠になりました。

分からない事があれば色々と教えてくれたり、撮影秘話等聞いたり
造形家の原口氏も紹介してくれました。
余談ですが、 原口氏からは
「ジャイアントロボの頭は上司に壊して捨てとけって
 言われたんで、 俺が足で踏んで壊した」
「だからオリジナルは残ってないんだよねー」
という リアルな話も聞けました。
M-1号の西村氏はその事で原口氏を責めたそうです(笑)
まあ、上司から壊せって言われたら、壊すしか無いですよね!! 
昔ですから、、。

こちらは1/1マスクではなく、人間大フィギュアの頭部分です。



この後、
K氏からマスクをお借り出来る機会もかなり増えて行きました。
T映特撮研究所にお邪魔させていただいたりもしました。
下の画像はそこへお邪魔した時の写真です。
当時 "特撮研究所" は一階が倉庫扱いになっていて、アトラク用の
ブツや撮影用のブツもゴロゴロと置いてありました。



ヒーローの衣装と一緒にふつうの洗濯物が掛けてあるのが
生活感溢れています。



アトラク用マスクやプロップマスクもよく見ると置いてあります。



ビーファイターカブトの撮影用コスチューム。
ブラックビートのボディ部分だと思います。



ライブマンの敵、ガードノイド・ガッシュ
おそらく撮影用。





ジライアの敵
妖魔一族頭領 鬼忍 毒斎
角のパーツが切り取られています。
何かに流用したのでしょうか?

更にK氏のコレクションも見せて頂きました。



スーパー1は撮影用のものをリペイントしちゃったもの。
K氏はレストアして保存する事が多く、
当時感は薄れてしまっています。



マスクの前後の接続方法がこれを見てやっと理解出来ました。
文献だと分かりにくかったですが、「百聞は一見にしかず」ですね。



ZXの撮影用ですが、アトラクションに使われた為にCアイに
ドリルで穴が開けられています。



忍者キャプターの土忍!!
まだ残っているのが凄い。



バイオマンのロボットピーボの成れの果て、、。
ショー用に真っ赤に塗られてしまっています。
女性用のマスクなので、余程小顔でないと男性は
被れません(^_^;)

こんな感じで、充実した日々を過ごしていました。
ブロッブ・マスク好きには嬉しくて堪らない時期でしたね、、。

そして、K氏からは技術もそうですが撮影用のプロップマスク等も
譲っていただく機会も多くなります。
自分のコレクションの約半分近くが、K氏から譲って貰った物です。
基本的に"撮影用マスク"を集めていた方なので、全て撮影用を
譲って頂きました。
当時譲って頂いた価格はもの凄く高額で、支払いも苦労しましたが
今、思い返すとかなり「格安」でした。



そんな " 師匠 " との出会いの話でした、、。