幸四郎の伊勢音頭に和事味の型 | 宗方玲・詩人が語る京都と歌舞伎

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歌舞伎座での「伊勢音頭恋寝刃」の続きは、いよいよ「古市油屋店先」です。

青江下坂を取り戻した貢と、それを気にしながら遊び呆ける万次郎。 幸四郎と菊之助がいいコンビ。

 

「相の山」からの通しで、すれ違う二人の関係がよくわかります。 よく似た二人が入れ替わる、座組も面白いかも。

幸四郎と菊之助をてきぱき捌くのが、新悟のお岸。 万座で恥をかかされた貢を、一人思いやる優しい人。

 

阿波の悪者に騙されて、仲居の万野に追い詰められる貢。 ここは、型に流されずに、きっちりと人物を見せたい。

それが上手いのが梅玉さん。 3年ぶりとなる幸四郎は、ピントコナの個性が一貫するよう、気を付けたとか。

 

万野の嫌がらせをかわしたのに、お鹿の告白にびっくり。 そこに、お紺からの愛想尽かしの追い打ち。

こんなものをよこしおった、、、万よべ、万野、、、そりゃわしの手じゃないわい、、、身不肖ながら福岡貢、、、

 

とんとーんと進む筋に流されずに、幸四郎がじっくり演じる。 立つ時と座る時の姿勢、煙管の使い方に注目。

万野は魁春で、父譲りの怖さ。 いつものきつい目張りと暗い声で、更に怖い。 これはこれで、一つの型。

 

どこかに人間ぽさがある、玉三郎、秀太郎、時蔵などに比べ、まったく笑いがない。 このピリピリ感。

そこにすかっと爽やかな、料理人喜助。 主筋の貢思いで、機転が利く人。 愛之助が演じてよかった。

 

もうひとり、騙されて殺される哀れな役ながら、どこか可愛いお鹿さん。 仁左衛門の相手もした、彌十郎です。

かわいそうになり過ぎないように、純な思いを大切にする演技に、客席から愛情込めた拍手が。

 

お紺は、雀右衛門。 一途に貢を愛する遊女ながら、刀の折紙を取り戻すために、貢に愛想尽かしをする。

特徴の震える声が、心の揺れを見せます。 待っている間の、座る位置、顔の表情、扇子の使い方に、京屋の技。

 

万野と組んで貢を騙すワル3人は、市蔵、亀鶴、松十郎。 ちょっと不均衡ながら、役に応じた個性がいい。

で、すり替えられた刀を巡っての、貢と万野のいざこざ。 どうなとしなはれ、、、あ痛っ、、しもたぁ、、、

 

誤って万野を殺した貢がブチ切れ。 久しぶりに観る伊勢音頭総踊りの中に、血みどろの貢が乱入する。

この「奥庭」、様式美が薄い殺し場で、少し冗長ぎみ。 それでも、幸四郎の見得がぴたっととキマる。

 

そこに、折紙を手に入れ本心を語る雀右衛門。 幸四郎を勇気づける愛之助。 いつもの大団円でした。