松竹座の公演で玉三郎の天守物語 | 宗方玲・詩人が語る京都と歌舞伎

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大阪松竹座での、玉三郎の初春お年玉公演は、うれしいサプライズの連続でした。

入場時にもらったパンフを見ると、えっ、天守物語。 上村吉弥がどう参加するのかと思ったら、こう来ましたか。

 

何をするか色々考えて、制作発表時になかった演目に決めたとか。 玉三郎は、富姫と亀姫の二役です。

また、スクリーンに映像が。 とうりゃんせ、とうりゃんせ、って、これはシネマ歌舞伎の天守物語か。

 

富姫が夜叉ヶ池から戻ってきたシーンのところで、スクリーンが上がり、芝居になる趣向。

舞台には、玉三郎の富姫、薄の吉弥、侍女の玉朗。 3人だけの濃縮された空間が、幻想的。

 

朱の盤坊が出てくるところから、またスクリーン。 ものも案内、べええと、獅童と女童のやり取りが楽しい。

ここでまた、芝居に。 亀姫は玉三郎。 富姫はディスプレイに映った玉三郎。 おお、これぞデジタルの技。

 

お姉様、おなつかしい。 わたしもお可懐い。 いいえ、お憎らしい。 御勝手。 やっぱりお可愛い。

このやり取りが、ぴったりの息。 そらそうだと思いながら、何だか不思議な演出が、ええ、お憎らしい。

 

まだまだ、ここから。 今日は何のご用? お箏のお披露目よ。 おや、原作とちがう展開に。

ここから、玉三郎の箏の実演。 久保浩助と菊重絃生との合奏とは、うれしすぎるサプライズ。

 

で、客席がざわついた後は、またサプライズ。 映像が松竹座の玄関になって、出迎えてくれたのは玉三郎の亀姫。

こちらへどうぞと、応接室に案内されると、亀姫が昔の松竹座の姿をとどめた、アルバムを見せてくれます。

 

その次は、道具帳。 舞台の画をめくりながら、羽衣、藤娘、雪の吉原と、舞台映像の再現。

ここから、奈落、せり上がっての舞台、花道まで、案内される趣向のおもしろさ。 ここで、リアルに戻ります。

 

ではご覧下さいと始まったのが、地唄の「由縁の月」。 今まで何回も拝見した、夕霧伊左衛門もの。

思いもよらぬ身請けが決まった遊女が、恋人に会えなくなる憂いを、水に映る月影に寄せて舞う。

 

箏の菊重絃生、三絃の久保浩助、胡弓の川瀬露秋の旋律に乗った、玉三郎の美にうっとりとしました。

リアルとバーチャルの中の、玉三郎の演出力と芸のうつくしさ。 これは、これから続きそうな予感が。