新国立劇場で菊之助の石切梶原 | 宗方玲・詩人が語る京都と歌舞伎

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国立劇場の初春歌舞伎公演に、行ってきました。 場所は、初台の新国立劇場です。

廻り舞台はあっても、花道やセリは無く、横幅が狭い中劇場。 いつもの復活通し狂言は、難しそう。

 

今回は、石切梶原、葛の葉、勢獅子。 縦横無尽に広がらず、中心に濃縮された演目が選ばれました。

 

まずは、「梶原平三誉石切」、通称「石切梶原」です。

敵役になることが多い梶原が、この狂言では、武者の心得を持つ、情けある人物で描かれます。

 

その梶原には、初役で菊之助。 吉右衛門型を演じるに際して、吉三郎に伺いながら映像等で勉強したとか。

岳父の重厚さを追わずに、思慮深さを強調したのがいい。 刀の目利きでは、懐紙を落として、見事っの一言。

 

じっとしているところでも、肚をみせます。 六郎太夫のピンチに、自分の恥辱を承知で、手練の技を披露。

刀に下げ緒を巻いたり、袱紗を濡らし手水鉢に置いたり、背中を見せて刀を振り下ろしたり。

 

細身ながら、吉右衛門型がすっきりとキマリます。 斬るときに、刀をすっと前に出すリズム感が菊之助。

こりゃ、オータニよりイチローか(?)。 そうして、さりげなく、六郎太夫親子に憐憫を伝える、優しさよ。

 

梶原に救われる六郎太夫親子は、橘三郎と梅枝。 役を押さえた梅枝が、大仰気味ながらていねいに。

いつも独特の存在感を示す橘三郎は、今日はちょっと控えめ。 好々爺にならないように、との心得とか。

 

どしっと構えて大きく見えるのが、大庭の彦三郎。 菊五郎劇団以外でも、もっと観てみたい人。

わあわあ言いながらも、役を押さえているのが、俣野の萬太郎。 いつもながら、器用な人です。

 

もう一人。 亀蔵は、剣菱呑助で酒尽くし。 いつもの怪人ぶりを控えて、しっかり間を押さえます。

狭い舞台に役者が充満する窮屈さ、チームワークはまだまだながら、菊之助の意気込みを感じた70分でした。