南座で小朝の落語と玉三郎の地唄 | 宗方玲・詩人が語る京都と歌舞伎

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南座での、春風亭小朝と玉三郎による「夏のひととき」は、二人の対談がプチ過激に盛り上がりました。

次は、小朝の落語で「一豊と千代」です。 講談の「山内一豊の妻」を、小朝流にアレンジ。 さあ、どうだ。

 

まずは、近江の長浜の様子から始まって、奥様の心得。

そんな大げさなものではありませんが、何かもらったら胸の前で受け止めて、ぐっと引き寄せると旦那はころり。

 

ここから、なさいませなどの言葉遣いのテクニック、どきっとさせる微笑み方など。 意外と笑いが少ないのは、なぜ。

さて、秀吉の足軽で一豊が、狼藉されそうになる娘を助けた場面。 この千代の、容姿、仕草、言葉にころっ。

 

晴れて夫婦になったものの、貧乏暮らしの中では、来る信長の流鏑馬に、馬は準備できまい。

そこに、千代の秘蔵の30両。 それで、名馬を買い求めたのに、試合の当日、千代が倒れて。

 

マクラから本題になって、急に講談調になってきました。 なぜか、人間の言葉を話す馬が、笑わせます。

難関の的をウマバウアーで射止めて、褒美の簪を千代にプレゼント。 やっぱり、受け取るのは胸の前。

 

はっはっはっ、笑うというより微笑んだあとは、玉三郎の地唄舞で、「由縁の月」(ゆかりのつき)です。

これは、南座の13年前、特別舞踊公演以来です。 このときは、獅童と隼人による、「関の扉」もありました。

 

背景は、鼠地の屏風。 上手に、箏で富山清仁、三弦と唄で富山清琴。 これは、13年前と同じ。

手前と奥に、二本の雪洞。 その対角線上に、遊女姿の玉三郎が、幽玄な舞を見せてくれます。

 

元々は、藤十郎が得意とした「夕霧伊左衛門」ですが、もちろん玉三郎の手の物。

思わぬ身請けで、愛しい恋人に会うことができなくなった悲しみを、切々と表します。

 

箏と三弦の美しい旋律、ゆったりとたゆとう唄。 水に映る月影に、憂いを寄せる玉三郎の技。

やわらかい中に、ぶれない体の芯。 まるで生きているように揺れる裾の捌き。 感情を表す、肩の線。

 

ぎゅっと濃縮された10分で、玉三郎ワールドを堪能しました。 このあとの、カーテンコールは爽やかに。

この企画は、来年の松竹座でもあるとか。 来月は、「ふるあめりか」と同じお気に入りとの、「牡丹灯籠」です。