歌舞伎座の菊宴月白浪に中車の味 | 宗方玲・詩人が語る京都と歌舞伎

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歌舞伎座の七月大歌舞伎は、昼の部の通し狂言、「菊宴月白浪」(きくのえんつきのしらなみ)です。

三世・猿之助が、163年ぶりに復活させ、その後、3回上演。 四十八撰中でも、特にお気に入りだとか。

 

今回は、石川耕士が人間関係を説明する長台詞を端折り、ビジュアルを楽しむ脚本・演出をしました。

演出が役者を引き立てるのか、役者が演出を活かすのか、代役の立場とは、そんなことを考えた芝居でした。

 

原作は、南北による「仮名手本忠臣蔵」の書替狂言。 斧定九郎が、塩谷家再興に尽力する、忠臣で登場。

忠臣蔵のパロディを見つけるのが、楽しみのひとつ。 澤瀉屋の某花形による口上人形が、早速沸かせます。

 

発端は、鶴ヶ丘八幡宮でなく甘縄禅覚寺。 そこで、兜改めでなく、宝改めをする面々。

塩谷家から縫之助と恋人の浮橋、家来の与五郎、高家から師泰が揃い、幕府方の石堂と山名に、お家再興の願い。

 

塩谷家家宝の短刀がなまくらにすり替えられたところで、不義により勘当になった定九郎が登場。

中車が硬いながらていねい、ゆったりした発音が聞きやすい。 脚本をしっかり読みこんだようで、ぶれません。

 

責任を負って切腹することになった、定九郎。 父の浪宅を訪ねると、九郎兵衛たちが蛸肴で酒宴中。

上使を迎えた定九郎は、むさ苦しい恰好から、きりっとした死装束へ、 早速、七段目と四段目ですか。

 

家で切腹されては畳が血で汚れると、おとぼけの九郎兵衛には、緊張気味ながら味のある、浅野和之。

息子に追求されながら本心を明かし、切腹する展開。 更に、定九郎が盗賊になることを決める展開に。

 

ここから、敵と分かった山名館に討ち入る、定九郎と塩谷家家臣。 雪の中の渡り合いが迫力十分。

中車の立廻りと見得が、しっかり型に。 妖術で雪がざっと落ちて、びっくり。 あれ、もう十一段目です。

 

ここで、「転」の場面。 定九郎の妻で病身の加古川には、清楚で不運な役がぴったりの笑也。

その世話をする与五郎は、あることから高家のご落胤であることがわかり、態度を変え加古川を殺す。

 

最後まで見せ場が多い与五郎には歌之助で、悪の華がもう少し欲しい。 足がくがくで花道を去るところは、工夫。

その与五郎と暗闘するのが、権兵衛。 これには猿弥で、舞台を引き締める役を、確実に押さえます。

 

場面は変わって、夜の隅田川の堤。 女伊達おかるの世話になっている、浮橋と縫之助がさ迷っている。

堤にやって来たおかるの父親の与一兵衛を殺したのは、なんと直助と名を変えた与五郎。 五十両~。

 

そこに来たのが、浮橋と(なぜかその兄の)権兵衛。 突然、敵方の浮橋に切りつける権兵衛。

妹、われの命はおれがもらった。 ついでに縫之助も切られ、川に落ちる。 七段目と五段目に、戻りましたね。

 

更に、ここにおかる。 最近、貫禄がついてきた壱太郎です。 父親の死を嘆くおかるに、権兵衛が提案。

敵討ちの助っ人をしよう、許婚がいるのなら上辺ばかりの夫婦になろう。 こりゃ、無理無理の四谷怪談。

 

なるほど、それで直助権兵衛。 相関図がないとわかりにくいながら、これで人物が揃って、さあどうなる。