歌舞伎座で玉三郎の髑髏尼 | 宗方玲・詩人が語る京都と歌舞伎

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東京での仕事の合間、歌舞伎座での三月大歌舞伎の、第三部と第一部に、一気に行ってきました。

まずは、第三部の「髑髏尼」です。 「かにかくに」の吉井勇原作の、平安末期の悲劇で、上演は約60年ぶり。

 

第一幕は、京の新中納言(平重衡)館前。 住民が舞台から見えない下手側を見て、怯えている。

京に攻め入った源氏方が、平家の氏族と思しき子供を殺しているよう。 ああ、これが暗い。

 

館に押し入り、男の子を連れ去る源氏方。 その血潮の後を追う、重衡の局。 これが玉三郎。

取り乱して、十二単姿で花道を去る姿が、狂気じみている。 鴈治郎の無常を嘆く僧、男女蔵の烏に執着する男が異常。

 

発端から嫌な気分。 続いての、奈良の尼寺も暗い雰囲気。

禁断の領域に侵入してきたのは、生まれつき醜い姿の鐘楼守七兵衛。 ここから、延々と続く七兵衛の嘆き。

 

演じるのは福之助。 歯切れ良い動きがさえる中、弱点は陰にこもりがちな台詞。 それを承知の配役なのか。

丸めた陰気な背中で、暗いつぶやきが続くのがきつい。 雪之丞たちの尼さんたちも、逃げ出します。

 

尼になった局は、息子の髑髏を離さないことから、髑髏尼と呼ばれている。 次の場は、髑髏尼がお勤めする堂内。

髑髏を小脇に、祈る髑髏尼の前に、現れる平家の一門と、重衡の幻。 お役の愛之助と、玉三郎がしばしの交感。

 

ここにやって来た、七兵衛。 髑髏尼への思いを遂げようと、迫ってくる。 拒否されると、心中を迫る。

ええ、下がりおろう、と、玉三郎の落ちぶれながらも高貴な演技は、さすが。 ああ、でも最後は、、、

 

ねちねちした七兵衛が出ている時間が一番長くて、殺し場で現れる重衡の幻は、見ているだけ。

抵抗しながら悲劇に終わる玉三郎の演技は見どころながら、幕が下りてもしばらく沈黙が続いた1時間でした。