映画・小津安二郎の麦秋 | 宗方玲・詩人が語る京都と歌舞伎

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文化博物館のフィルムシアターは、都合がつくと名作に出会えます。

今回は、小津安二郎の昭和26年の作品、「麦秋」を拝見しました。

 

舞台は、北鎌倉。 引退した学者、その息子の勤務医、孫2人の三世代。

同居するのは、医者の妹。 縁談を持ちかけられたときに、近所の幼なじみへの思いが、、、

 

と、平凡な日常生活の中にサプライズが訪れて、みんなの生活が激変する。

それでも、無いようである見えない絆が、ちらほらしてほっとする。 これが、オズでなく、小津の魔法。

 

それぞれの俳優が、日常の生活の中で、普通の人として暮らしているのが、小津の世界。

うるさく口出しするのに根は優しい、兄の笠智衆。 良かったねと、同情したくなるおばさんには、杉村春子。

 

色々な人物の出番が多くて、キャラが目立つのが小津の映画。 その分、時間が長い。

独身組と結婚組の、仲良し4人組のしゃべくり。 結婚しなくちゃ分かんないわよ、ねーえ、だって。

 

まあ、よくしゃべること。 料理屋の娘役で、淡島千景がきらりと光っています。

兄嫁役の三宅邦子が、地味なようで重要な役。 ずっと出ていて、ストーリーを引き締めています。

 

主役は、もちろん、原節子。 丸の内のキャリアウーマンで、天真爛漫のようで、時折みせる複雑な表情。

杉村春子に説得されて、わたし決めたわ、って。 おんな心と麦秋の空、この演技がいい。

 

それから、70年前の鎌倉の風情。 名所旧跡は、それほど出てきませんが、腰越海岸の鄙びたこと。

ラストは、妹夫婦の新生活でなく、田舎に移り住んだ父母の生活。 菅井一郎と東山千栄子に、ほのぼの。

 

懐かしの、いい映画でした。 (追加料金が必要ない、いいシアターでした)って、それかーい。

フィルムの保存状態が良くなく、音声がゆがんだり、映像が途切れたりするのは、ちょっと残念。