酸っぱすぎるリンゴを食べたときのような、奇妙なあと味。
クリストス・ニク監督のデビュー作、「林檎とポラロイド」を、観てきました。
ここはどこ、私はだれ? 男がバスの終点で、運転手に起こされると、記憶がなくなっていた。
身元が分かるものは、全くなし。 運転手が慌てずにある所に連絡して、連れていかれた収容所。
どうも、突然に記憶喪失を引き起こす、奇病が蔓延しているらしい。
治らないことがわかると、治療者たちから奇妙な提案が。 新しい記憶を作りましょう!
住まいを提供されて、当面の資金をもらって、まずは落ち着く男。 記憶はなくても、林檎を食べることは忘れない。
次々とやってくる、「新しい自分」を作るプログラム。 自転車に乗る、仮想パーティで友達を作る。
それをポラロイドカメラに撮って、治療者に送る。 寡黙で物憂げ、真面目にこなす男。 やっぱり食べる、林檎。
うーん、何だか裏がありそう。 勝手に家に入ってきて、男の様子をうかがう、治療者たちも何だか怪しい。
まさか、秘密機関が特殊ウイルスをばらまいて、奇病になった人類を洗脳しているとか?
それはともかく、同病者と交流しながら、ホラー映画を見たり、飛び込み台からダイブしたりの生活が続く。
と、そこは映画、起承転結の「転」が。 同じ病気の女と知り合った男は、女のプログラムを手伝うことに。
車を運転して木にぶつける、バーで酔っぱらってナンパする。 男にも、同じプログラムが後から来る。
飄々としながらも、怪しみだす男。 突然口に出る、昔のこと。 なぜ、林檎ばかり食べるのか。
そうして、末期がん患者を看取り、葬式に出るプログラムで、突然よみがえってきたこととは?
ああ、過去はこんな身近に。 実は、冒頭のシーンに、際どくネタバレが。 このほろ苦い、ユーモア。
謎解きの楽しみより、やっぱり奇妙なあと味が強い映画です。 秘密機関の陰謀かどうかは、謎のままでした。
共作の、ギリシャかポーランドかスロベニアのどこなのか、時代もはっきりしない、モノトーンに近い場面。
ポラロイドカメラ、テープレコーダー、写真をはさむアルバムなど、アナログっぽいアイテムが印象的です。
(公式サイトはこちらで)

