上方歌舞伎会の引窓がいい味 | 宗方玲・詩人が語る京都と歌舞伎

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国立文楽劇場の、上方歌舞伎会に行きました。

日頃は脇で舞台を固める、上方の俳優たちが、大役に挑む発表会です。

 

まずは、「双蝶々曲輪日記」から、「引窓」です。

そう、七月の大阪松竹座で、仁左衛門、幸四郎、孝太郎などで、拝見したばかり。

 

これが、場所を国立文楽劇場にして、上方勢で固めるだけで、全く印象が異なります。

お幸は、真面目で手堅い、當史弥です。 本当の息子と義理の息子を愛する、優しいお婆さん。

 

表情、台詞、動作に、味があります。 腰を曲げてゆったりしているところと、激情で行動するところの、硬軟がていねい。

松竹座での吉弥に引けを取らない、いい仕上がり。 もっと観てみたくなる、役者の一人です。

 

吉弥の美吉屋からは、吉太朗がお早で参加。 浪花の張り切りボーイも、もう20歳、まだまだ勉強中。

台詞がない所でも、細かな気配りが必要な、お早は難しい。 よく似たタイプの、孝太郎が参考になるかも。

 

与兵衛には、鴈治郎一門の翫政。 小柄で愛嬌があるのは、師匠ゆずり。

武士になりたての剽軽さと、代官として機転を利かせる懐の深さ。 人物に、人情味があふれています。

 

濡髪には、藤十郎一門の鴈大です。 単調になりがちなお役ですが、感情の見せ方に工夫がありました。

同道の侍二人は、松四朗と愛治郎。 短い出番ながら、大きな体で存在感十分なのが、おもしろい。

 

と、いろいろ言えるのも、文楽劇場ならでは。 舞台と特設の花道が近くて、一人一人がよくわかるんです。

この会で、女形を熱心に指導してきたのが、秀太郎さん。 ダブルのスーツ姿で、にこにこ挨拶されていたのが、偲ばれます。