京都造芸大(現・京都芸術大)・映画学科卒の、村瀬大智監督の作品を観てきました。
まずは、2018年制作の、「赤い惑星(ほし)」です。
謎の疫病で、人が次々と死んでいく、(日本によく似た)とある惑星。
墓守のヒトシは、来る日も来る日も、穴を掘って運ばれてくる死人を埋めている。
この設定が、奇抜。 白黒の画面の中で、ヒトシが盛り土に突き刺す、赤い旗が鮮やか。
死体のサンゲリアのような包まれ方が、不気味。 異常な情景が、淡々とした平凡な日常に。
そんな時、赤いシャツの男が、ふらっと現れる。
追い払ってもしつこく付いてきて、とうとうヒトシの家(ガレージ)に居つくことに。
この男、やたらとむかつく言動なのに、なぜか憎めずに、ヒトシも段々と慣れてくる。
たまに行く町では、ただ踊るだけの若者、ただ絵を描くだけの女。 あれっ、若者しかいないぞ。
とうとう死体を運んでくる役人も、来ないことに。 えっ、赤いシャツの男なんて、いましたっけ?
俺は出ていくぜ、お前も来るんだろって。 そうか、赤い旗と赤いシャツ、この男はヒトシの〇〇なのか。
後に残ったのは、町から連れてきた、絵を描くだけの女。
コロナ禍を予告したような40分に、物語が凝縮されています。 広野、風、水、変なダンスが効果的。
もう一つは、同じく2018年制作の、「彷徨う煙のように」。
映像作品を撮っている美大生(京都美術大、だって)が、小説家の家に取材に来る。
おとなしそうな男、普通の京都弁の女、ちょっと訳ありの女。 このインタビューが、ああもう、下手。
最初の小説は恋愛もので、あれは実体験なんだ。 最新作のサスペンス(連続殺人)は、もちろん虚構。
話がどんどん、変な方向に行く。 やっぱり、経験しないとね。 でも、最新作はもちろん、聞き取りだよ。
とうとう、おとなしそうな男が、訳ありの女に向かって、何か言いだしたぞ。
「ねえ、知ってたんだろ。 いつから? いつから?」
これは、恐ろしいことが起きそう。 いや、なにもないんです。 それでは失礼しますと、三人。
そう、なにも起きないんです。 そのかわされ方が、気持ちいい。
小説家の様子、家の調度、仕事部屋の本や絵が、何か暗示しているのですが。
これも、濃い30分でした。 撮影場所が、北白川疎水沿いの駒井家住宅なのが、効果的です。
低予算で制作するために、役者でも現場で色々と仕事をしていたとか。
アイデア豊富な、村瀬大智監督のこれからに、期待です。