市民狂言会に笑いとペーソス | 宗方玲・詩人が語る京都と歌舞伎

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京都観世会館の、市民狂言会に行ってきました。

年に4回、茂山家による狂言三昧が、楽しみなんです。

 

まずは、「萩大名」。 ほめることは、難しい。

田舎大名が、萩が咲き誇る、粋人の庭を見物に行って、即興の和歌を所望される。

 

あまりの無粋さに、こっそり和歌を教えていた太郎冠者が、とうとう愛想をつかして。

七五三と千五郎のやりとりが、絶妙。 太郎冠者の島田洋海が、飄々とした味です。

 

次は、「長光」。 そう、歌舞伎舞踊では、「太刀盗人」です。

田舎者の千三郎が、なかなかのインテリぶり。 目代の宗彦が、しっかり捌きます。

 

黒ひげで顔が見えない、すっぱは誰? おお、茂山家随一の変わり者(?)、あきらです。

現代風に台詞を語るのが、いかにも。 やるまいぞ、やるまいぞ。

 

締めは、「貰聟(もらいむこ)」。 お酒は、ほどほどになされませ。

酒癖の悪いDV夫が、妻を打擲して追い出す。 実家に戻った妻に、舅は怒りが爆発。

 

これは、珍しい。 けっこうシリアス。 中世の庶民の生活なのに、現代でもありそう。

でも、大丈夫。 子はかすがいとは、よく言った。 「まあ、良いわ」と、最後に呟く舅が、優しい。

 

聟は千之丞、嫁は井口竜也、舅は網谷正美。 この掛け合いに、ペーソスがたっぷり。

 

市民狂言でうれしいのは、小舞があること。 能で言えば、仕舞です。

忠三郎の「福の神」、千五郎の「景清」(迫力あり!)、茂の「京童」で、ほっこり楽しめました。