猿之助と七之助の吉野山 | 宗方玲・詩人が語る京都と歌舞伎

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歌舞伎座で開催中の、八月花形歌舞伎。 なんとか、第三部と第四部に行けました。

 

第三部は、義経三本桜から「吉野山」。

季節は外れていますが、華やかで軽やか、心をうきうきさせてくれる演目です。

 

まずは、花道から静御前が登場。 お姫様ですが、世間知らずではない芯の強さがあります。

柔らかみの中に、しゃきっとしたところを見せるのは、七之助。 清潔な色気は、この人ならでは。

 

静が鼓を打つと、すっぽんから忠信が現れました。

これが、猿之助。 声こそかかりませんが、舞台が一気に華やかになります。

 

二人が、義経拝領の着長と鼓を飾り、義経を偲ぶ。

そうして、忠信が屋島の合戦を物語る。 軽快な猿之助の舞に、妙味がたっぷり。

 

心が通いながらも、主従の立場の、微妙な二人の道行。

静と忠信が、点描画のように浮かんで、決して混じりあわないのが趣深い。

 

つらい旅であっても、舞台は桜満開の吉野山。 世界は、ただただ、明るいのです。

 

ここで、ひと息。 逸見藤太が現れました。

軽妙な猿弥の演技に、客席の空気がすっと軽くなります。

 

なになに、「見渡せば、(客席は)ソーシャルディスタンス」だって。

四天との「まて、まて、まて」のボケつっこみや、「えん、しち」尽くしで笑わせてくれました。

 

賑やかな立廻りのあとは、エンディング。

鼓の声を聞いた時から、怪しい素振りだった忠信。 静が去ったあと、ついに本性を現します。

 

そう、彼は、鼓の皮に使われた狐夫婦の子なんです。

武士の姿で子狐の様子を見せながら、ぶっかえりで、あっと思わせる猿之助がうまい。

 

そうして、子狐六方(?)で、静を追いかけていくのでした。

ああ、この続きで「四の切」が見てみたい。