430 ゆるぐねえんだべ | 無無明録

無無明録

書を読むは、酒を飲むがごとし 至味は会意にあり

 父が亡くなって1か月以上経った。ワシの家にある仏壇の父と母の写真の顔はいつも優しい。

 父が亡くなる二日くらいの前ことだと思うのだが、見舞いに行ったワシの顔をつくづく眺めながら荒い息の中で「ゆるぐねえんだべ」と云った。北海道弁で、「体が辛いんだろう」と云う意味合いだ。ワシは「ゆるぐねえのはオレより父さんだべ」と思ったのだが、何も言わずに「うん」とだけ言った。それが父との最後会話になった。

 

 ワシは、その後父の手を握った。強く握れば強く握り返したこともあった。でも、あれが必死の力だったのだと思う。

 まあ何だね。人は皆死んじゃうからね。ワシももっと親孝行したかったな。

 

 しかし、本当に仲の良い夫婦だったから、2人で笑いながら、あはは、うふふとやっているのだと思う。

 ありがとう。ありがとうございました。