雨に濡れた緑がきらきらと陽光を跳ね返し、輝きを増す。
さわさわと木々が揺れ、心地よい新緑の香りが鼻腔をつく。
ばしゃん。
近くの水溜りが、通り過ぎる車に踏まれて形を変える。
ふと気になり、そちらを見やる青年。
青年の顔が一瞬引き締まる。
そうしてまた何事も無かったかのように、青年は口元に不遜な笑みを浮かべた。
皮肉の言葉と共に─。
「どうせろくでもない用だろ?高坂」
「そう嫌がらなくてもよかろう?安田殿」
高坂と呼ばれた相手は口元に妖艶な笑みを浮かべると、その赤い唇をおもむろに開いた。
ほどなく離れた公園─。
盛りを過ぎた藤棚の下に彼らはいた。
先刻、安田と呼ばれた青年は胸ポケットからタバコとライターを出すと、慣れた仕草で火をつける。
ひとつ。
吸い込んで吐く。
宙に、白い煙が漂う。
「それで、何の用だ?」
相手を見ることも無く、ぼんやりと散りかけた藤を見つめて問いかける。
高坂もそれを特に気にする風でなく口を開いた。
「先日、お方様が鬼共に消されてしまってな、お屋形様も危うく消されかけたぞ」
ぴくり。と安田の眉が動く。
まぁ、さすがはお屋形様、大事には至らなかったがな。
続ける高坂の言葉に、安田の中で何かがざわめく。
ちりちりと火種が大きくなるのを感じながら平静を装い口を開く。
「へぇ。そいつはご苦労なこったな。それと俺がどう関係あんだよ」
「おや、まだ気づかぬか? あの、お屋形様が消されかけたのだぞ」
再びタバコをくゆらせる安田に、高坂はくくっと喉の奥で笑った。
(気づかない・・・だと? まさか!)
はっとして、安田がぽとりとタバコを取り落とす。
その様子を楽しげに見つめていた高坂は、妖しげに口の端をあげ更に続ける。
「ほう。ようやく気づいたようだな」
しかも─
「景虎殿は記憶を失っておられるようだ」
(な・・・なんだと?)
呆然と見開かれた目を見つめ返し、高坂は満足げに艶やかな黒髪をなびかせて踵(きびす)を返した。
迷い無く確かな足取りで歩みだして、ふと思い出したように立ち止まる。
そう言えば・・・
「景虎殿のそばにいる者、あやつは六道世界の脅威だ。くれぐれも気をつけるが良かろう」
物々しい単語にハッと我に返る安田。
すかさず問い詰めようとした安田に、突如として激しい≪力≫が襲い掛かる。
≪護身波≫をはる間もなかった安田は、そのまま弾き飛ばされた。
うずくまる安田に美貌の主はぽつりと呟いた。
「その程度のものも防げぬとは、安田殿も腑抜けてしまわれたようだな」
ぎらり。と目を上げるが、もうそこには高坂の姿は無かった。
ずきずきと痛む胸を押さえる安田の口から、かすかにもれた言葉は爽やかな風にかき消されて消えた─。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
うーむ。
高坂が思うように動いてくれない・・・
さすが高坂。
今回文章若干造りを変えたのがいけなかったのか?
読みにくかったらすまん・・・
しかし、あの高坂との会話は5月の終わりの話だったなぁ。
いきなり出てきて言いたいことだけ言ってさっさと消えやがって。
しかも、いってぇ置き土産。。。
本当にありがたいこって。
