暖炉を模したチェストの上に的をすえ、先程から熱心にダーツをしている千秋。

しかし、距離が明らかに遠いのが気にかかる。

的と千秋の位置が、壁の端と端にあたる。

狙いを定めスナップをきかせてダーツを投げる。

ダーツは過たず的の外側ぎりぎりに刺さった。

「お、やるじゃん俺」

この調子だといけそうだな。

にまにまと口許に笑みを浮かべつつ、続けてダーツを投げる千秋。

(見てろよ、景虎)

「楽しい授業になりそうだ」


小躍りしそうな勢いで廊下を歩く青年を見つけ、同じ数学科の山口が声をかけた。

「千秋先生、おはようございます」

振り返り、軽く会釈して挨拶を交わす。

千秋の隣に並ぶと山口はにっこりと微笑み、疑問を口にする。

「朝からご機嫌なようですが、何かいいことでもあったのですか?」

「そうなんですよ。もうすぐ目つきの悪いにゃんこに会えるので、すっごく楽しみなんです」

「そうですか。ネコ飼うんですか~、いいですねぇ」

人のよさそうな笑顔で、にこにこと応える山口。

つられて千秋もにっこりと満面の笑みを浮かべる。

穏やかに始業前のひと時が流れていた。


黒板に問題を書き、簡単に説明しつつ生徒の方を向くと、一見ガンをつけているのかと思うような目つきの鋭さで、じっと何やら考え込んでいる少年が目に入った。

(おんや~、まぁたややこしい事考えてるなぁ。仕方ないなぁ~)

にやりと口の端をかすかにあげると、おもむろに振り返り、少し使って先の丸くなった長いチョークを手に取った。

白いチョークを右手に持ち、軽く手首を回す。

軽く目をすがめて、勢いよく右手をスイングする。

「ってぇっ・・・!」

いきなり額を押さえて顔を抑えた高耶がこちらをギッと睨む。

「いきなりなにすんだっ! このボケっ!」

(おーおー。吠えとる吠えとる)

教壇の上から千秋はチョークを握ったまま、ニッと白い歯を見せて笑った。

「またボーッとしてたな、仰木。ちゃんと授業聞いてないと駄目じゃあないか」

(楽しいなぁ~。センセイっていいなぁ)

勝ち誇ったように教壇でふんぞり返り、ちらちらと指に挟んだ2本のチョークを見せる。

「君は転入したばかりで、授業の進み具合が分からないんだから。人一倍ちゃんときかなきゃいけないんじゃないのかね」

「こ・・・・・・こーゆーことだったのかよ」

悔しげに、押し殺した声で震えるように言うと、高耶はようやく千秋がダーツゲームを買ってきた理由を理解したようだった。

「またチョークを投げられたくなかったら、ほら。175ページ問5。前に出て解きなさい」

「く・・・・・・っそぉ・・・・・・っ」

「どうしたんだい? 仰木」

(くぅ~~、これこれ。センセイはこれがないとなぁ。あぁ楽しい)

ニヤニヤと笑顔で急かす千秋。

「さぁ、早く前に出て解きなさい」
高耶の目が、覚えてやがれと言わんばかりに鋭さを増す。

それを受けて千秋が不敵な笑みで受け流す。


楽しそうな千秋と、不機嫌な高耶。

二人の授業はまだしばらく続きそうである。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



本当に長いこと間隔空けてしまったなぁ・・・。

わりぃな。。。

長いこと空けすぎたせいで、若干書き方が分からなくなってしまった感があるが・・・

おかしな文章になってたらすまない。


これは火輪の前編のあのシーンだな。

俺目線で書いて見た。

どうだろう?

楽しんでもらえたら嬉しいんだが。



夢を見た

モノクロに包まれた世界で

俺とお前がいる夢

黒と白の空間で

俺たちだけがいる

二人だけがやけに

色彩(イロ)鮮やかだった

鮮烈過ぎて怖いくらいだ

お前は居るか?

そこに、居るか・・・



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


だいぶ日が空いてしまったから少し詩を載せてみた。
どうだろう。。。

これは、そうだなぁ。
黄泉あたりを思ってもらえたら嬉しいかなぁ。
コタ直江に不信を抱き、自分の中の何かに気づきそうな。そんな感じ。。。

まあ・・・
辛いなぁ。。。


青い空に赤みがさしかかり、昼と夜との狭間におちる。
夕暮れのやけるような色と静かに澄んだ青の融合。
光と影
明と暗
海と月とが交わる瞬間に、描きなれた人の面影を空へ描く。
描いた面影が淋しそうな笑みを浮かべていた事に、高耶は少し戸惑いを感じた。


「お待っとさん。はよ食え」
コンビニの袋を差し出すと、千秋は高耶の隣にどっかりと座り込んだ。
一度渡した袋を再び引き寄せ、がさがさと肉まんと缶コーヒーを引っ張り出す。
次いで、肉まんにかぶりつくと、両手を空けてコーヒーのプルタブを起こす。
先程までの空気が、千秋によってがらりと変えられた事に高耶は少し安堵すると、知らず笑みを浮かべていた。
視線に気付き、ちらと横を向いた千秋はその笑みにぶつかり、思わず肉まんを取り落としそうになった。
「あんだよ、景虎。気持ち悪いぞ」
「気持ち悪いってお前なぁ・・・」
「てめえがにっこり笑ってっと怖いんだよ。なーんか厄介ごと押し付けられそうでな」
くわばらくわばら。と言いながら両腕をさする素振りをしてみせる千秋。
「ひでぇ言われようだな」
ミルク多めの缶コーヒーを開けつつ、高耶はげんなりと脱力した。


さっさと肉まんを平らげて、ひと際大きく寄せた波の音にチラリと視線を返す千秋。
目に映ったのは、にじむ青い空と赤くもえる地平線(そら)。そして碧い海。
海に飲まれてゆく赤。
海が昼の生命(かがやき)を飲み込んでゆく。
そんな光景だった。


ごくり。
残ったコーヒーを飲み干す。
「そう言えば景虎」
空いた缶をコトリと置き、胸ポケットからタバコとライターを出す。
声を掛けた先へは視線を向けずに、タバコを1本出して口にくわえ火を点す。
ちりちりと赤い火種が宿り、それを一度ふかして次の語を続ける。
「お前さっき、ぼへーっと見てたのってあの空か?」
うながされて高耶も同じ方向を見やる。
先程より赤が少なくなっている。
いや、今まさに飲み込まれてゆく瞬間だった。
「ああ。そうだな・・・昼と夜の狭間にあるあの月。まるでお前のようだと思ってな・・・」
「へぇー・・・。ハザマの月ねぇ」
返された言葉にハッと我に返る高耶。
慌てて千秋に体ごと向き直って弁解を始めようと口を開くが、声を風に乗せるより先に聞きなれた音に阻まれる。
「じゃあ、俺はさしずめ見守る者か。まぁた厄介な役目だなあ、おい」
けけけっと笑いながら冗談めかせて言った後、ふいに空を見つめて続ける。
「なら、お前らは夜の闇に浮かぶ赤い月だな」
「あかい・・・月?」
高耶が目を見張って千秋の横顔を見つめる。

海から流れてくる風に髪が揺れ、そっと手を触れて軽く掻き揚げる。
「血を流してるような、アレか?」
少しうつむきがちに問いかけた高耶は、苦い表情をしていた。
傷口から流れ出る止まらない血を見透かされたようで、まともに顔が上げられなかった。
「ああ。生きてるって実感できっだろ。痛みは生きてる証じゃねーか」
全力で、生きてる証だろーが。
言い終えざま、勢いをつけて立ち上がる。
背を向けたまま、千秋は小石を拾い上げると海に向かって投げた。
石は海には届かず砂に呑まれて消えた。


「全力で生きろよ。仕方ねーから俺がこの目で見ててやる」
しっぽをなびかせる千秋の背を見つめて、ただ高耶はそっと目を閉じた。




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今回は、テーマ「MOON」でのコラボ作品だ。

コラボ先はここだから、連動して見て貰えると楽しいと思う。


北条氏照 「月~泡沫の想い~」


風魔小太郎 「MOON」