忘れられない二人 | 無名弁護士の司法革命

無名弁護士の司法革命

裁判での解決では遅すぎる。
争いが起こってからでは遅すぎる。
どうすれば争いがなくなり、どうすれば人は幸せに生きられるのか。
本気で、本音で話します。
新しいモノの見方、新しい気づきがあれば、
人生も世の中も大きく変わるかもしれません。

無名の受任事件の90%以上は、民事交渉、民事訴訟、家事調停、人事訴訟、倒産処理、企業法務等、大きく分けると民事系です。
例えば、100件受任してたら、90件は民事系で、残り10件以下が刑事系という感じです。


ドラマや映画の影響なのか、弁護士の仕事の大半は、悪い人の弁護つまり刑事系だと思っている人が少なくありません。
でも、意外や意外、一部の刑事専門弁護士は除きほとんどの弁護士はほとんど民事系の仕事をして生きています。
受任件数中10%以下が刑事系という無名でさえも、比較的、刑事系が多いと思われていて、刑事系の世界ではそれなりに有名なくらいなのです(笑)
ときどき、無名さんは刑事弁護士ですよね、って間違われるくらい(笑)


無名は民事系の仕事も大好きですが、刑事系の仕事はまた違った意味で大好きなのです。
何が好きかというと、無罪を勝ち取るとか、殺意を覆して傷害致死に落とすとか、そいういうことではありません。
無罪を争うとか、殺意を覆すのもとってもやりがいがあります。
しかし、そういう楽しみは、ガッツリ争っている民事系の仕事でも十分味わえます。
つまり、これは、訴訟戦略や訴訟技術を駆使して勝訴する、という楽しみです。
でも、無名にとって、刑事系の仕事の醍醐味は勝訴する楽しみとは別のものです。


それは、深く関わる楽しみ、とでも言うべきものなのです。


例えば、有罪間違いなし、実刑確実という刑事事件の弁護を引き受けます。
ほぼ検察官の主張どおりの事件ですので、弁護側が勝訴する楽しみなど全く期待できません(笑)
刑事事件の大御所の有名弁護士だったら、見向きもしないかもしれません。
若手の刑事弁護人でさえ、特にやることがないと言って適当に流す事件かもしれません。


ところが、無名は、ときどきこの手の事件にメチャクチャハマっていくのです。
有罪間違いなし、実刑間違いなしですので、刑事弁護本来の仕事はほとんどありません。
でも、何度も何度も接見に行くのです。
それは、無名と彼が、お互い人間同志として向き合うための接見なのです。
被告人とその彼女(内妻さん)との絆をつなぐための接見だったりするのです(笑)


「先生、俺、あいつと別れたくないんです、でも刑務所入ったら、きっとあいつは待ってられないと思うんです」

「先生、私、あの人がまたこんな問題起こして、正直疲れました。もう信じられません。別れたいですけど、あの人、本当はそんなに悪い人じゃないことも私はよく分かっています。本当に目を覚ましてほしいですし、別れる前に、私に出来ることは全部やってあげてから別れたいんです」


無名は、こういう二人と関わるのが楽しいのです。


どんなに忙しくても、どんなに疲れていても、この事件、なぜか苦にならないのです(笑)
俺が何とかしてやるとか、そんな上から目線じゃないのです。
むしろ、この二人に深く関わることで、無名のほうこそ、どれほど人生を教えてもらったことか。
どれほど、男と女について深く深く考えさせてもらったことか。
お二人と無名との間で、同志のような深い絆を、どれほど感じさせてもらったことか。



彼がヤクザであろうと関係ないのです。
なぜなら、無名は彼を正当化するつもりはないですし、彼も自分を正当化するつもりはないのです。
こういう結果を招いたことで、彼と彼女は、真剣に、何が悪かったか、考えているのです。
自分の人生に向き合っているのです。
いや、分かりません、演技も半分あるかもしれません(笑)


裁判に役立つようなことは、彼も彼女も無名も何もできませんが、ただひたすら、自分たちの人生を3人それぞれが真剣に見つめ直しているのです。
たとえ、演技半分だとしても、互いに、本当に濃密で、本当にろくでなしで、でも、本当に言葉を超えて分かり合える時間があるのです。


彼は拘置所で無名に言いました。
もう二度と彼女を泣かせたくないです。彼女を愛してます。
俺もう本気で人生やり直します。
今回がラストチャンスだと思います。

そうですか、裁判の場で、泣きながら言ってくれればいいのに(笑)



彼女は言うのです。
もう遅すぎるんです。
私、あの人待てません。
私もいい加減今後の自分の人生を考えないと。
そう言いながら、仕事の合間を縫って、差し入れやら面会やら、一生懸命こなしているのです。


無名は感じるのです。
彼の人生が無名の人生とダブり、彼女の人生が無名の人生とダブってると。
彼らが無名と出会ったのは無意味ではないし、無名も彼らと出会う必要があったと。


先生に出会えてよかったと、彼が言う。
先生が彼を弁護してくれてよかったと、彼女が言う。
お二人の人生に関われてよかったと、無名が言う。



ああ…

これ以上、楽しい仕事があるだろうか。




訴訟ゲームの勝ち負けに夢中になるのも最高に楽しい。
最高の主張と立証を組み立て、裁判官や依頼者を感動させるのも最高に楽しい。
敵対していた相手方から、訴訟終了後に、今後、うちの顧問弁護士になってくれと言われるのも最高に誇らしい。
1000万円超の報酬をもらえる事件も最高にうれしい。
どうか、無名を、人権派とか、人情派などと思わないでください(笑)
無名は、そんな分かりやすい人種ではないです。



でも、この二人と深く関われて、無名はほかのどの事件よりも最高に充実感と幸せを感じていたりするのです。


裁判はどうなったかって??
もちろん、実刑ですよ(笑)
求刑よりも相当に刑期は短くなったので、それなりに無名の弁護も役には立ったでしょう。


でも、無名がうれしかったのは、そんなことじゃないんです。


結局、彼女は、彼に対して出所まで待ってますとは言いませんでした。
彼女は言いました。
自分の人生考えたら、もう待っているほど余裕はない。
待てる自信がないと。



彼は言いました。
こうなるまで気付かなかった俺は大馬鹿野郎だ。
今まで俺を本当に大事にしてくれてありがとう。
待たなくていいと。


はい、つまり、二人の関係を保つという意味でも、無名は、この事件で、目に見える成果を上げなかったのです。
でも、無名にとっては、弁護士生活20年あまりの中で、間違いなく、この事件は3本の指に入るくらいの物凄い重大事件なのです。



先生、〇年後、俺が出所したら、先生とあいつと3人で飲む機会を設けさせてください。
先生の立場もあるでしょうから、迷惑なら無理強いしません。
でも、俺も、あいつも、先生と出会えてよかったと思っています。
あいつも、俺が出所したとき、先生と3人で飲みたいって言ってくれました。



無名も、決して若くありません(笑)
人は変わるし、人の本音でさえ移ろいゆくものです。
それをイヤというほど承知のうえで、無名は言うのです。


出所したら、3人で飲みましょう。



別に、あなたがヤクザの幹部だろうと関係ないです。
ただし、条件が2つあります。
①あなたが間違った方向に行くときは私は意見します。私の意見を聞いてください。
②彼女があなたと別れたいときはかっこよく受け容れて応援してあげてください。

無名がそういう人間であることを知ったうえで一緒に飲みたいと言うなら、喜んで飲みましょう。



あれから、だいぶ月日がが経ちました。


今でも、お二人と飲む日を無名は楽しみにしているのです。


もし、よくある話のように、この話がすべて流れてしまっても、この事件に対する無名の思いは1ミリも変わらないのです。
この二人に対する気持ちは1ミリも揺るがないのです。



自己満足だろ?
そうです(笑)


依頼者から気に入られたっていう自慢か?
そうです(笑)




無名は、この仕事を、この二人との関係を自慢したくてこのブログを書きました。



ご清聴、ありがとうございました。

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