ニューデリー
親愛なる人たちへ
お元気でしょうか。
僕は今、インドのニューデリーに来て数日が経ちました。
ニューデリーはインドの首都です。
大統領官邸や国会議事堂、また各国の大使館など、
政治に関する機関が集まっています。
西洋風の落ち着いた雰囲気を感じるのは、
イギリス人に設計された街だからでしょうか。
道路は広いし、地下鉄も走っています。
僕はインドに来て初めて、マクドナルドで食事をしました。
牛肉の代わりにチキンでしたけど、
雰囲気は他の国のマクドナルドと変わりませんでした。
やっぱりマックは美味かったです。
すごく混んでいて、インド人は立ったまま食べてました。
インド版のドナルドは、スティーブン・キングの『It』みたいでした...
(『It』‥ピエロが子供を襲う映画)
さて、僕にとって今回の旅のテーマは、陸路によるアジア横断でした。
インドからパキスタンへ入り、イランを経て、トルコに入る。
そしてアジアの最終地点であり、ヨーロッパのスタート地点でもあるイスタンブールまで行く。
空路ではなく、バスか鉄道といった陸路によって行く。
しかし今日、その目標を早くも断念させられました。
今朝、ニューデリーのパキスタン大使館へ行きました。
パキスタン入国のためには、ここでビザを発行してもらう必要があるのです。
ビザを出してくれるか、不安を抱えたまま大使館へ向かいました。
昨年は大洪水で国土の4分の一が浸水する被害を受けているし、
北部のアフガンとの国境地帯は相変わらず危険で、
つい数日前も少年による自爆テロがあったばかりでした。
とにかく必要書類とパスポートを持って、朝一番に大使館へ行ってみました。
受付で「日本人だがツーリストビザが欲しい」と伝えると、
「5番窓口へ並べ」と指示されました。
「並べ」と言うことは、並べばビザを発行してくれるということか?
僕は少し、期待を感じました。
窓口には、インド人だかパキスタン人だかが殺到していました。
並んで僕の番が来ると、「日本人だがツーリストビザが欲しい」と伝えました。
すると窓口の男は、こう言うのです。
「ツーリストビザが欲しければ、日本のパキスタン大使館へ行け!」
それを聞いて周囲のインド人だかパキスタン人が笑っている。
僕の後ろの男が、「ほら、聞いただろ!列から出て行けよ」と肩を突付いてくる。
僕は腹が立ち、食い下がりました。
「俺は今、デリーにいるんだ。日本のパキスタン大使館へ行けるわけがないだろ!」
しかし、こう言われ、終わりました。
「デリーのパキスタン大使館では外国人にビザを出さない。
どうしても入国したければ、自分の国にあるパキスタン大使館へ行き、相談しろ」
これでアジア横断は断念せざるをえなくなりました。
僕がアジアを陸路で横断したかった理由は、
アジアがヨーロッパへ変わってゆく姿を見かかったからでした。
陸路にこだわるのは、五感を使って、その道のりを感じたかったからです。
その距離感、空気、風景、匂い、温度、味、音などを通して、
その道のりを体に刻み込みたかったのです。
しかし、仕方がありません。
旅で最優先すべきは、ロマンよりも安全ですから。
僕を信じて送り出してくれた人たちを、裏切るわけにはいきません。
平和になってから改めて、中東を旅することにします。
一日でも早くこの地を旅できることを願いながら。
さて、この後どこへ向かうかです。
考えた結果、僕は空路でイスタンブールへ行くことにしました。
パキスタンとイランを飛び越えて、
とりあえずアジアの終点へ行くことにしました。
今、その手配を進めています。
アジア横断の夢は捨てがたいけど、
世界は僕の都合では動いていないということでしょう。
どうしようもない状況に拘らないことも、
世界を旅するなら学ばねばならない技術なのかも知れません。
世界は常に動いています。
生き物のように、大海原の波のように。
ガチガチの頭で波に乗ろうとしても、たぶん沈むだけでしょう。
柔軟な頭で、波乗りをしなければなりません。
何よりも愛すべき人たちを、裏切るわけには行きません。
無事に旅を終えることだけが、唯一の約束ですから。
嘘はつきません。
先日もインド人のドライバーに、
「俺は嘘は嫌いだ!」と文句を言ったばかりでした。
それではまた。
元気にお過ごしください。
メインバザールのネットカフェにて



