コルカタの思い出 | バカのアフォリズム

コルカタの思い出



やどかり日記


親愛なる人たちへ

お変わりありませんか。
僕は今、コルカタにいます。
ずっと体調を崩しています。
とうとう下痢になってしまいました。

下痢の苦しみは、昨年東南アジアを旅した時に痛いほど味わったので、
今回は気をつけていました。
衛生的なものを食べ、充分に睡眠を取っていました。
それでもダメでした。
水や食べ物のせいではなく、環境の変化によるものでしょう。

下痢はアジアを旅するなら避けられないことかも知れませんが、
これが笑えないほど苦しいのです。
ただ便がゆるいだけじゃなく、意識は朦朧とするし、
全身は風邪のひき始めみたく痛むのです。

そして何よりも怖いのは、出先で突然、激しい便意に襲われることです。
僕は昨日、地獄を味わいました。
観光中に、突然便意に襲われたのです。

「何でこんなところで、こんな時に!」
もう、自分のケツを蹴り上げたい思いでした。

インドの街は、探しても大便ができるトイレがないのです。
もう、宿まで戻るしかありませんでした。
しかし、そこは宿から4キロ近く離れた地点です。

僕は拳を握り締めて、必死に歩きました。
観に来たはずの西洋風の建造物なんて、もうどうでもよく見えました。
クソの役にも立たないと思いました。
便所の方が、よっぽど立派な建造物だと思いました。

激しい苦しみでした。
宿までの4キロが、果てしない距離に思われました。
それなのに、インドは人も車もやたら多く、スムーズに歩けないのです。

そこに日本人をカモにするタクシーや物売りが声を掛けてくる。
「Where you go?」とボッタクリのタクシー運転手。
「便所に決まってんだろ!」と思いました。

さらに食い物屋のオヤジ。
お盆にたくさんのミートパイみたいなのを乗せて、「食べないか?」と勧めてくる。
「この僕が、ものを食べたそうな顔をしてますか?」と質問したくなりました。
通り過ぎると、後ろから「What you want?」と声を掛けてくる。
「この顔を見ろ!顔に書いてあるだろ!」と思いました。

宿まで1キロの地点で、限界が来ました。
「もうすぐだ」という思いに、体が勝手に緩み始めました。
冷や汗から、僕は半泣きに変わりました。

そして、とうとう宿のある通りまで来た時、
まだ宿に着いていないのに、
僕の体は「宿に着いた!」と勝手に勘違いを始めました。

宿は建物の4階にあり、急な階段が果てしなく感じられました。
一段づつ階段を上るたびに、ケツの筋肉が緩み、
パンツが重くなり、湿ってゆくのです。
僕はしみじみと思いました。
「ああ、どうして人生って、こんなに辛いものなのだろう」と。

僕の部屋の鍵はなかなか開かないのですが、
この日はいつになく開かないのです。
20秒くらい開きませんでした。

トイレに駆け込み、便座のない便器にしゃがんだ時、
僕は動物的な雄叫びを上げていました。
その声に反応してか、ネズミが二匹、部屋を駆け回っていました。
僕は意味もなく、「このクソ野郎!」とネズミに怒鳴りつけました。

地獄でした。
アジアを旅するなら、下痢は避けられないとすれば、
これも旅の一ページなのでしょう。

体が元気ならば、どんな汚い宿だろうとスヤスヤ眠れます。
体が元気ならば、どんな汚い場所に行こうとも、笑っていられます。
どんな乗り心地の悪い鉄道であろうと、何であろうと。

でも、体が不具合ならば、
どんな素敵な場所に行こうとも、
どんな素敵な宿に泊まろうとも、笑えない。

「体こそが最大の宿である」と痛感しました。
また1つ、旅から僕は学びました。

ありがとう。
このブログを、僕のパンツに捧げます。

サダルストリートのネットカフェにて


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