ナガルコット
日本の皆様、ナマステ。
ナマステはネパールの「こんにちは」です。
ネパールと聞いて、皆さんは何を連想するでしょうか。
中にはヒマラヤを思い浮かべる人もいらっしゃるでしょう。
しかし首都のカトマンズからは、ヒマラヤ山脈を見ることはできません。
それで僕は、ヒマラヤを眺めに、ナガルコットという町まで行きました。
ローカルバスを乗り継いで行きました。
ローカルバスは乗り方がわからず、バスステーションに行って戸惑いました。
バスステーションは人とバスが入り乱れて、わけがわかりません。
どこでチケットを買うのかも、どのバスに乗るのかも、何もわからず途方にくれました。
しかし片っ端のバスから「ナガルコット?」と行き先を言って、「あっちのバスだ」「こっちのバスだ」と言われるうちに、ようやく目的のバスに乗れました。
バスが走りだした時、安堵から笑いが込み上げました。
何だか「旅してるな」と、感じたのです。
その後も乗り継ぎで少し戸惑いましたが、何とかナガルコットへ着きました。
標高2000メートル近い、山の上の小さな村でした。
適当なホテルにチェックインして、早速ヒマラヤ山脈が見える場所を探して歩きました。
少し歩くと、見晴らしのいい場所に出ました。
遥か向こうには、ヒマラヤ山脈が見えました。
まるで雲と見間違うかのように、雪を被った白い山々が、うっすらと遠くに連なっていました。
その山々は、パノラマのように、どこまでも連なっていました。
ナガルコットの村は、ヒマラヤの展望以外には、何もない所でした。
満足な電気もありません。
日が暮れると、どの家も、一本のロウソクか、何ワットか知れない、本当に薄暗い電気一つで、明かりを灯していました。
商店やレストランも、例外ではありませんでした。
僕は薄暗いレストランで、食事を注文しました。
食事が出てくるまで40分くらいありましたが、不思議と長いと感じませんでした。
僕は厳かな気持ちでした。
それは、祈りに近い気持ちでした。
ホテルの部屋に戻っても、薄暗い電球が一つだけでした。
洗面所の電気はつきませんでした。
暗い中でシャワーを浴びようとしました。
お湯の蛇口を回し、3分くらいすると水が少し暖かくなってきました。
しかし、それ以上暖かくなりません。
どうやら、その限りなく水に近いお湯が、ここでの「お湯」なのです。
標高2000メートルの夜は寒く、とてもこの水温のシャワーは無理です。
僕はシャワーを諦めました。
僕の部屋にはテラスが付いていました。
清水の舞台みたいなテラスでした。
夜、そのテラスから空を眺めました。
星空でした。
地上には、人々の最小限の光が、まるで火のついた炭のように、光っていました。
星空と、人々の最小限の光だけの夜は、まるで祈りのようでした。
僕は愛する人たちの健康を願いながら、早めにベッドに入りました。
しかし、眠りかけた頃、外から大音量の音楽が、スピーカーから流れだしました。
ホテルのロビーで、大音量の音楽を流しながら、人々が馬鹿騒ぎを始めました。
音楽が必要以上の爆音で始まるたびに、僕は思わずツッコミを入れたくなりました。
「電気ないんじゃねえの?」
その騒ぎは深夜まで続きました。
今、カトマンズに戻り、これを書いています。
喧騒と排気ガスが渦巻くこの街も、明日でお別れです。
明日は200キロ、ポカラへ移動します。
それではまた。
皆さんの健康を、心から願ってます。
カトマンズのネットカフェにて





