『計算名人免許皆伝』(東京出版)
計算問題集は、世の中に星の数ほどあります。
しかし、「計算のしかた」そのものを、ここまで徹底して教えてくれる本はほとんどありません。
この本は、計算ドリルではありません。
むしろ「計算の指南書」であり、『読み物』として楽しむ本です。
構成は「初伝」「中伝」「奥伝」と進んでいきます。
とくに「中伝」までの内容は、中学受験生なら全員知っておいてほしいレベル。
計算の工夫はもちろん、「どこにメモを書くのか」「式をどう並べるのか」「どこを省略するのか」といった、実際の計算の作法まで扱っています。
ここが、この本のすごいところ。
普通の計算問題集は、きれいに活字で印刷されています。
しかし、実際の受験生はそんなふうには計算しません。
難関校を目指す子たちが、紙の上で実際にどう手を動かしているのか。
その計算式やメモの取り方が、手書きの形を交えながら示されている。
だから、小学生にも圧倒的にわかりやすい。
さらに、「○○の術」と名づけられた計算技が次々に登場します。
読んでいるだけでも、「あ、こんな見方があるのか」と少し賢くなった気分になる。
そして後半になると、内容はかなり深いところまで入っていきます。
中学校で習う「展開」や「因数分解」に通じる考え方まで、それを数学として教えるのではなく、「算数」としてどう捉えるかを説明している。
最後には「乱取り稽古」。
第1ラウンド、第2ラウンド、第3ラウンドと、かなり骨のある問題が待っています。
出版社は東京出版。
中学受験算数の世界では、『中学への算数』を出している出版社です。
この雑誌に集まるのは、中学受験算数の世界でも屈指の先生方。
だから私は、東京出版の算数本にはかなりの信頼を置いています。
2008年に刊行され、それでも今なお売れ続けているロングセラー。
計算問題集を何冊もやらせる前に、
「そもそも、上手な子はどう計算しているのか」
を知ってほしい。
『計算名人免許皆伝』は、そのための一冊です。
これは「計算をたくさん練習する本」ではありません。
「計算がうまい子の頭の中」を覗く本です。