神戸の中華同文学校に行かず、普通の公立小学校に通いながら中国語を効率よく学習させる方法はあるだろうか。前述の方法2について考えてみたい。
日本人の子供が親の仕事の都合で海外に行き、現地の小学校やインターナショナルスクールに通う場合、日本語補習校があれば週末に通い、日本の学校の進度にあわせた国語と算数の授業を受けるといったケースが多いようだ。子供の負担は大きくなってしまうが、そうすることにより日本に帰国した時に比較的スムーズに日本の学校に入っていける。
中国版の補習校も東京で運営をされている方がいるようだ。週に一度、中国語で授業を行い、中国人子弟に対して中国語で授業を行っている。ただ、神戸や大阪には今のところそういう補習校のような形で運営している学校は見つからない。
神戸に補習校があったとしてはたして子供は中国語を話せるようになるだろうか?
日本人家庭が海外の補習校に通うケースの場合、たいていは両親が日本人であり、日本語を軸として育ってきたはずだ。家庭で使われる言葉も日本語であり、週一回の集中トレーニングで日本語のレベルは保つことができるかもしれない。ただ、日本語が家庭内の共通言語である日本在住のわが子の場合、週一回の中国語学習だけでどれほど中国語を話せるようになるかには甚だ疑問を感じる。また、家族も相応のサポートが必要であることは間違いない。たとえば、家庭の中で週2日は中国語で会話をする日を設けるなど。とにかく、子どもだけでなく親のほうにもかなりの覚悟がないと成功させるのは難しいだろう。
こうしてみてみると、子どものときから中国語を徹底して習わせるというのは困難に思えてくる。子ども本人が中国語学習を継続することに対して高いモチベーションを維持できるのなら不可能ではないとは思うが、好奇心が育ってくる中で当然、中国語以外の興味対象が生まれてくるだろう。その時に仮に中国語に固執していたら子どもの隠れた才能の芽を摘んでしまうことにもなりかねない。
子どものときからの中国語学習は本人の興味の対象が中国語にあるときにのみ最大の成果が得られる。それ以外のときは最良の選択肢ではないように思える。
日本にいながら子どもに中国語を習得させるには次の3つの選択肢が考えられる。
1.神戸中華同文学校に入学し、中国語の授業を受ける
2.日本の学校に通いながら補習校などで中国語を学習。この場合、本人と家庭の努力がかなり必要となる。
3.日本にいる間は中途半端な中国語学習はさせず、その後、大人になってから留学するなどし集中的に中国語を学習する。
まずは1について考えてみたい。
神戸には幸い、中国人子弟を教育するための学校、中華同文学校があり小学部と中学部を開設している。そこでの授業は主に中国語で行われ、中華同文学校で教育を受ければそれなりの中国語能力はつくだろうと思う。
ただ、問題点として以下の二つがひっかかる。
1.卒業生の子弟、中国国籍の子どもが優先的に入学を許可されるため、日本国籍であるわが子の入学は難しい可能性がある
2.日本人としてのアイデンティティを強固なものにしたいと考える場合、中国語習得のためとはいえ中華学校で教育をうけるのはどうかという疑問が残る
とくに、2については大切で、日本で日本人として育てるのなら、周りを同じ価値感や文化を共有する友達に囲まれたほうがいいと思う。
日本全国にも中華学校はまだ5校しかなく、神戸にそのうちの一校があることは幸運だが、現在のところ、最善の選択肢だとは思えない。