電波操作がどのように開発・発展してきたのかを調べる中で、米軍が資金拠出していたスターゲイト計画も分析した。これは遠隔透視技術の開発プログラムで、SRI(スタンフォード・リサーチ・インスティチュート)が実験と人材育成を担い、米軍はその技術を戦場における敵の位置把握に利用しようと考えていた。
1970年代から始まった計画は最終的に成功せず、1990年代に入って米軍はプログラム自体を閉鎖した。この遠隔透視実験も電波操作の問題の一環であり、遠隔透視がどういう感覚かもよく理解している。
基本的に、電波操作でははっきりしたイメージを視覚化することはできない。人が脳の中で見る映像は光があって始めてクリアなイメージになるため、頭の中だけでは限界がある。光は網膜を通して、そのまま視覚野に繋がっている。それはパルス的な情報であり、光の陰影に対して脳に直接的に情報が送られている。
つまり、それは特定の周波数に基づいた信号ではない。もちろん、電気的信号であるため周波数は常に発生するが、それぞれの情報は周波数や化学物質の種類とは関係がなく、パルス的に存在するか否か、あるいは強弱の問題である。周波数特性を持っていないので、外部からその光信号が操作できず、電波操作を通して対象者にクリアなイメージを抱かせることは不可能である。
ただし、脳で見ている情報は光だけが全てではない。目から得られる情報は完璧ではなく、幾つのも盲点があることが知られている。それらの足りない情報は脳内の記憶によって補償されており、最終的に全てが合わさった形で目から見える映像が完成する。
電波操作ではこの視覚野で補償する部分をコントロールできる。しかし、それは光がないためにぼんやりとした映像にしかならない。ある程度慣れてくると漠然とした形や最低限の情報はイメージできるようになるが、はっきりとした映像を頭の中で見ることは出来ない。
おそらく、これがスターゲイトプログラムで実験されていた遠隔透視の正体である。これらの映像は言語の助けがあればもっとクリアなイメージになる。つまり、より記憶からの補償を受けることによって、もっと明確な意味を持ち出す。
それでも脳内で浮かべる映像には解像度に限界があると思っているが、一方で、常に例外は存在する。例えば、ドラッグで幻覚を見ることがある。その場合、目を瞑っていても、もっとはっきりした形を見ることがあるだろう。その状況であれば、電波操作で何らかのイメージを送るともっとはっきりしたイメージを抱けるのかも知れない。ただし、それがドラッグの影響によるものか、電波操作によるものかは区別が付かない。
これはまた同時に、クリアなイメージを抱ける人がいることも意味している。記憶からの引き出しだけで、もっとはっきりした映像を浮かべられる人はいるだろう。それはその人の脳の性質に依存する。
少なくとも、僕にはぼんやりとしたイメージしか見えない。念のためであるが、それは電波で送られたイメージであって、僕にはサイキックの能力はない。一方で、僕よりも長期間に亘ってスパイの工作を受けている人もほとんどいないはずである。本来的には僕は既に死んでいるか、あるいはスパイになっているかのどちらかだからである。そういう意味では、一般的には電波操作でははっきりとした画像を送れないと断言できる。