緒方盗聴事件の発覚によって、当時の警備局長であった三島健二郎が頸になった。それ故に、彼が実際にこの工作を指揮していた可能性が高いが、それだけでは確定できない。何度も議論してきたように、全ての警備局長が等しく電波工作を理解していたのではないため、公式の指揮命令系統からだけでは誰が実際に工作を指揮したのかは分からない。

 

 公安の電波工作は裏工作機関によって担われており、警備局長はその全ての工作の決裁をしていたわけではないため、三島が警備局長だからと言って、その工作の決裁を担っていたとは限らない。ただし、誰かが工作を決定しているのであり、彼は有力な公安畑の警察官僚であったため、彼が知っていた可能性は極めて高い。

 

 一方で、彼はここまでの主要なテーマの1つであった國松長官銃撃事件には関わっていない可能性が高い。三島は公安内部で影響力のあったキャリアであったものの、頸になったため、警備局長OBであったとしても彼の警察に対する影響は限られていた。長官銃撃事件クラスの隠蔽であれば、長官OBレベルのランクの高さが必要になる。

 

 また、彼は左翼でもなければ、左翼過激派シンパでもない。彼は1932年生まれで、60年安保の時には28歳であり、その時点では公安畑のキャリア官僚になっている。つまり、状況的に左翼過激派は本質的な敵と認識しており、シンパシーを抱く可能性は極めて低い。

 

 また、彼はパチンコ利権にも絡めなかった。彼が警備局長の間に東京地検特捜部が保通協を手入れしており、それを押し止められなかったのだから、彼がパチンコ利権のインナーになることはなかった。

 

 彼は電波操作を知っていたと思うが、左翼過激派シンパでもなく、パチンコ利権にも絡んでおらず、途中で頸になっているため、それほど影響力を及ぼせなかったと考えるのが自然だろう。