オウム事件時の裏理事官は石川正一郎であり、彼は本質的に多くの公安裏工作に関わっている。それを理解するためには、まず、裏理事官がどのようなポジションなのかを理解する必要がある。

 

 公安内部には工作を行う裏組織が存在し、今ではそれはゼロと呼ばれている。その組織にはいろんな呼び名があり、サクラやチヨダと呼ばれている頃もあった。この組織がゼロと呼ばれているのは、公安0課という意味合いが強い。

 

 この組織についてはここまでも何度も触れてきたが、ゼロは裏組織といえども警察の組織であり、一般的な行政行動から大きく逸脱することはない。組織的に言うと、この裏組織は警察庁警備局警備企画課の下で統括されており、裏理事官はこの課に属し、裏組織を管理するポジションにある官僚である。

 

 多くの書かれているものを見ていると誤解があるように感じるが、この裏理事官の決定権は本質的には限られている。理事官というタイトルは日本の官庁の中では特殊であるが、一般的な官庁組織の階級としては課長補佐の中に含まれる。

 

 課長補佐というのは実質的に政策領域を管理するポジションである。日本の官庁組織では30代前後の若手高級官僚が実質的に政策を担当することが多く、この課長補佐が実質的に政策の管理を担うことが多い。

 

 つまり、課長補佐が具体的な法案や政策を作れる立場にあり、その影響力はかなり大きい。しかし、実際の決定権はもっと高位の官僚が握っており、課長補佐は本質的に一部の職掌を分担しているだけである。

 

 これは裏理事官にも当てはまり、彼のラインには警備企画課長、警備局長、警察庁長官がいる。裏理事官がこのラインを無視して、大きな方向性の決定を行うのは容易ではない。理事官である以上、彼らは30代である場合が多く、そもそもそれほどの仕事は任せられない。

 

 つまり、裏理事官は現場の責任者で、警察の裏工作の企画立案実行に深く関わるが、実際の工作は決定できない。

 

 ただし、ある一定の権限を持っているので、その範囲内であれば工作は行える。例えば、一定の工作が既に決定されている状態で、それを状況に応じて変化させなければならない場合、この裏理事官の責任で工作を調整できるはずである。これが本質的な裏理事官の姿である。

 

裏理事官には強大な力はないものの、与えられた目標に対する工作の計画立案実行を担うため、実質的には組織の中で大きな役割を果たすことになる。つまり、オウム逃亡犯の話に戻ると、北朝鮮を保護する工作を計画立案実行したのは石川正一郎であり、だからこそ、彼は北朝鮮に信頼されており、彼も北朝鮮シンパになっている。