対人工作活動は、基本的に、アセットを獲得し情報を取得することが目標であるが、実際には、スパイとアセットの関係はその範囲で留まらない。情報は必ずしもアセットから諜報機関に流れるのではなく、諜報機関からアセットへも流れている。

 

 その際に、諜報機関はアセットへの情報を操作して対象となる組織の活動を変容させられる。例えば、他国政府の中にアセットを抱えている場合、情報操作や偽情報を流すことで、対象となる政府の行動を自国政府の利益に適うように変化させられる。

 

 実際のところ、この工作は情報操作に留まらない。もっとはっきりと他国の意思決定に関与し、その方向性も変えられる。その政府の高官がアセットであれば、スパイは政府の意思決定に大きな影響を及ぼせる。結果として、諜報機関は情報操作以上の工作を行える。

 

 一方で、この対象となる組織は他国政府であるとは限らない。現在的には、一般企業とテロ組織の中にもアセットは多数存在する。特に、テロ組織内のアセットはかなり前から存在し、それは諜報機関がいろんな国で反政府組織を支援していた延長線上にあると思われる。彼らが最終的にテロ組織化したため、諜報機関はそれらの組織内にアセットを抱えているが、それだけでなく、純粋なテロ組織内においてもアセットの獲得という形で浸透している。

 

 テロリストのアセットを抱えると、そのテロ組織の活動が把握できるようになり、テロを防ぐことに役立つ。もちろん、アンダーカバーのエージェントを潜入させることもできるが、それは相手の危険度に依存するだろう。危険な組織には基本的にアンダーカバーを潜入させるよりも、アセットの獲得を目指すと思う。もちろん、どうしても組織内に浸透できない場合は、アンダーカバーを近づけるという作戦を採る場合もあるだろう。

 

 そのアセットにテロ組織内で工作を行わせると、テロ組織内が混乱する場合がある。例えば、偽情報を流すことで内部の敵対関係を誘発できるかもしれない。しかし、その工作活動の延長線上には大きな問題がある。それはアセットとなったテロリストのテロ活動を黙認することである。

 

つまり、テロが起こるのを知っていて放置することである。特に、そのアセットであるテロリストがテロ組織内で出世するためには、テロを成功させる必要がある時もある。その場合、それよりも大きなテロを防ぐという名目で、そのテロリストの活動を放置されることがある。

 

 その状況は更に悪用される可能性があり、自らの利益のためにテロを起こす活動まで生まれる。CIAがどのようなことをしたかを議論すると複雑な問題になるので、別の機関を使って分かり易く言うと、北朝鮮は何度もテロを行っている。つまり、政府の意思決定としてテロを行う国は依然として現代的に存在する。そして、それが北朝鮮だけのはずはない。

 

 また、国家による意思ではなく、諜報機関の意思としてテロが行われることもある。政府としては意思決定していないことでも、スパイが権限を逸脱して工作活動を行うことは頻繁にあり、その中にはテロも含まれている。この場合、諜報機関がテロを行うのではなく、諜報機関のアセットであるテロリストがテロを実行する。

 

 そして、その場合に、諜報機関はテロを黙認する。つまり、テロの黙認にはテロリストが計画したものを黙認する場合と、諜報機関がアセットのテロリストの実行させたテロを黙認する場合の2通りがある。いずれの場合においても、防げる可能性のあるテロを防がないケースが存在する。

 

 

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