前回、最後に雇用の維持・拡大の話を書きましたが、これは政治的には非常に重要なことだと思います。


純粋に金銭的価値で測ると、GDPにとってプラスかマイナスかという話になりますが、国益を考える上での重要な制約条件として、雇用の維持・拡大が図れるのかというのは重要なポイントになります。


もちろん、日本の現状には産業構造の転換が必要で、その中で日本が資本を輸出して、労働を買うというのは理解できますが、その考え方に根本的に欠落しているのは、日本の人口規模はかなり大きいということと、産業構造の転換に置いていかれた人をどうするのかということです。


日本は中国ほど巨大な人口を抱えていないにせよ、それでも労働集約的な仕事や筋肉労働的な仕事等も必要で、国民を食べさせるのは政治にとってとても重要なことになります。


最終的には社会保障で救済されるにしても、社会保障の予算的な問題だけでなく、そもそも労働をしてあるいは努力をして、その対価の下に、自分の価値観に沿った自由な生活を求めるのは間違ったことではないし、日本的な価値観の中では非常に大切にされているものだと思います。


産業構造の転換を考えるだけでなく、産業構造の転換の隙間に落ちそうな多くの人たちにもしっかりと機会を与えることを考えないと、日本の将来は必ずしも明るくないと思います。


そういう意味でも、雇用の維持・拡大というのは、TPPを考える上でも重要な制約条件だと思います。