経営安定化という名の下で価格補償をするのは、基本的に、間違っていると思います。それは経営が安定するというよりは、経営能力が低下すると思います。農業経営を外から純粋に見ていて、安定化が必要だなと思われるのは、自然条件に対するものだと思います。


ほとんどの産業は自然条件から切り離し、環境をコントロールし、それによって生産の安定化を導いています。屋根ひとつとってもそうですが、それは炉にせよ反応塔にせよ、あるいはクリーンルームにせよ、基本的には自然条件から切り離していきます。それは自然条件化では難しいことがたくさんあるからです。


農作業にも一部そういう側面があり、だからハウスや工場化があるわけですが、日本の農業の大部分は自然条件下を利用して生産活動を行っています。ただし、自然条件のコントロールはとても難しく、それが経営の安定を妨げる一番の要因になると思います。


疫病や冷害や日照不足はコントロール不能なので、その補償をどうするかという方が一般的な意味ではより経営安定化に資すると思います。それは結果としての価格をコントロールするということではなく、より本質的なものだと思います。


経営安定化を標榜するのであれば、そういう対策をすべきだと思います。実際問題としては、農水省はそれぞれの災害が起こるたびに緊急対策をしているんだと思いますが、日本全体を見渡したときには、それなりの頻度で災害疫病が起こっているわけで、それを恒常的にどうするかを考えるべきだと思います。


もし、農業に他の産業と違いがあるとすれば、それは多くのことが自然条件に依存していることであって、それが経営の前提であり、それが経営を不安定化させるものだと思います。そして、その自然条件の突然の変化というのは農業経営者の能力の問題ではないので、それによって淘汰されるというのは競争条件を維持する上においても問題があります。


そう考えると、経営安定化のための価格補償は本来的には極めて小さい予算額であるべきもので、不測の事態に対する予備費をもっと積みますこととか、それぞれの災害疫病に対する保障のあり方というものをもっとしっかり考えた方が、より本質的な経営安定化の議論になります。