前回、コメの上場化の仕組みのあり方について考えてみましたが、違う側面から上場化の問題を考えてみたいと思います。


まず、上場化をすると、基本的には標準化が求められます。この標準のスペックを決めないと、基本的には取引が出来ません。日本で一番標準的なのはパールライスだと思いますが、それを標準化させてしまうと、全てがJAにコントロールされてしまうような気がします。そういう意味では、パールライスに近い成分のものを標準化させて、それを納入できる業者というものをもっと認定する必要があるんだと思います。


そして、標準米はスペックを決めれば取引できるようになると思いますが、実際問題として、その中ではブランド米の価格形成が出来なくなってしまいます。そのためには、スプレッド取引を導入すれば良いような気がします。ブランド米と標準米の価格差をスプレッドという形で取引できるようになれば、基本的にはベースの標準米の規模感で取引ができることになるので、そうすると市場は安定化します。


このスプレッドを現物と先物の両方で取引し、倉庫の方に、ブランドごとのストックがあれば、基本的には取引として成り立ちます。スプレッドを交換すれば良いことになるので。


次に問題になるのが古米だと思います。貴金属だと劣化しないですが、コメをストックすると劣化するので、それをどう扱うかという問題が出てきます。古米をどうするかということですが、市場の回転の中で吸収されるなら古米の問題は起こりませんが、そう簡単に進むとも限らないので、古米自体もスプレッド取引の対象とする必要があるのかもしれません。


LMEの仕組みの中では、倉庫間の移動というのは扱わないですが、コメの価格がそれほど高くないこともあるので、倉庫間の輸送コストというのはそれなりになるかもしれません。ここは難しい問題ですが、倉庫間ごとに取引をすると細分化されて、取引が成り立たなくなってくるので、誰がこの輸送コストを持つのかというのは最終的に解決される必要があります。


倉庫間の輸送費というのもスプレッド化して取引することは可能ですが、そうなると取引主体がコメ卸から輸送業者に変わってしまうので、そのやり方が正しいのかという問題は残ります。


ここの仕組みは難しいですね。一つの考え方としては、直接的な倉庫の在庫を持てる権利と出し入れの権利を一次業者だけに与えて、彼らが独自にマーケット間の輸送を取り決めるという形でも良いのかもしれません。ただし、それだと現物で引き出すことはコントロール出来るのですが、現物で納入するところをどうやって処理するのかが分かりません。


完全に自由にしてしまうと、ある業者が新潟に納入して、東京で引き出すと、輸送代が浮くことになってしまうので、意図的にそういう現物取引をする人たちも出て来るだろうし。この処理の答えを見つけるのは難しいですね。


あるいは標準米だけを全ての倉庫で扱って、ブランド米は特定の倉庫だけということは可能かもしれません。その場合に、違う倉庫にブランド米を納入する際は、横持ちコストを引受時にはらうと言う事にすれば、問題は解決するかもしれません。


また市場を通すことによって、品質管理もし易くなります。それは物理的な市場を持つことのメリットだとも言えます。


ここまで上場化の議論をしてきましたが、たぶんこのようにはならないと思っていますが、この仕組みにすると、価格の安定化という目的以外のことは達成できます。広義に言うと、価格自体も安定するし、今の自由取引米よりは透明な仕組みになると思いますが、ただ価格の上下が明らかな形で表面に出て来るので、一般的に受け入れられるのかという問題はあると思います。