産経の記事に、円高と復興債発行の話が書いてあったので、論評したいと思います。
記事のリンク
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110424-00000075-san-pol
この記事の最後に、この方の結論がありますが、全文引用します。
「政府が巨額の復興国債発行を決め、日銀が発行規模に応じたお札を刷って市場に流す。すると、通常は通貨の大量増発ということで円急落の要因になってしまうと心配する向きもいる。ところが、復興国債を買うために民間金融機関が外貨建て資産を換金する際に円が買われるので、円相場はむしろ上昇するかもしれない。米国にはない金融債権大国の利点である。
逆に、菅直人政権は復興財源を増税に求めようとする。震災後の消費自粛ムードの中で増税に踏み切ると、内需は急激に落ち込む。民間の消費や投資に必要な資金は政府に吸い上げられる。震災前からの慢性デフレは悪化し、円の対外価値、つまり円相場だけが上昇する。生産設備被害、国際的な放射能風評被害や節電の影響を受けている輸出産業に何重ものマイナス圧力がかかる。」
このパートは前段と後段に分かれているので、まず前段に書いてあることを時系列に沿って書くと、
復興債を買うために、民間金融機関が外貨建て資産を円に換金する。
政府が復興債を発行する。
民間金融機関がそれに応じる。
最後に、日銀が復興債の発行規模と同じ額の国債を市場から買う。
ということになります。曲解はしてないと思います。この方はおそらく、日銀が直接的に政府の債券を引き受けるということは主張していなくて、民間金融機関が国債に応札することを書いているんだと思います。それも日銀は復興債が市場に出回った後で、国債を買うんだ思います。そうでなければ、復興債を買うために金融機関が外貨資産を円に換金するという話が出てこないので。
ここで書いてあることは二つあって、一つは復興債を市場で発行すること。もう一つは日銀が市場から国債を買うこと、つまり、金融緩和をすること。復興債を市場で発行することに関しては、ほとんどの人が必要だと感じてるんだと思います。
もう一つの金融緩和の話ですが、ここで書いてあるのは、それによって円安になる心配はあるけれど、民間金融機関が円を買うから大丈夫という趣旨になります。
まず民間金融機関が円を買うかということに関しては分かりません。そんなにストレートじゃないような気がします。更に、その結果として円高になるかというのは更に不確実です。その上ですが、復興債を日銀が市場から買うと、民間金融機関はお金が余ってしまいます。そうなるのであれば、彼らには外貨資産を売って、円を買うというインセンティブは根本的になくなってしまいます。この方向性で金融政策をというのは、少し乱暴のような気がします。
一方で、金融緩和の影響を考えるのであれば、直接的にはインフレがどうなるかということです。円安を議論することが間違っているとは思いませんが、直接的に重要なのは金融緩和をして、インフレを導かないかということです。
規模にももちろんよりますが、物価が上昇基調にある中で、更に金融緩和をするというのは危険だと思います。この週末に白川さんのコメントが流れていましたが、景気が極端に悪化するのなら、追加的な金融緩和もあるという話をしていました。ということは、僕が思っている以上に、日銀は景気にもある程度の責任を持つ気があって、多少のインフレは引き受けるということなんだと思います。
いずれにせよ、物価の維持が日銀の主目的で、安定した景気が日銀の副目的で、白川さんになって以降、日銀は以前よりも直接的に景気をどうするか考えるようになっているので、その枠組みの中で、ものごとが決定されることになります。
インフレとか何とか言わず、金融緩和すればいいじゃないかという人たちもいますが、もしここで金融緩和をした結果として、年末に物価上昇が5%になったとすれば、国民の生活が困ります。手取りは増えない中で、物価が5%も上がると、生活はそれなりに辛くなります。30%の物価上昇が許容範囲だというなら、大抵の金融緩和は可能だと思いますが、国民の許容範囲としては、物価が全体として4-5%上がると、高いと思うんじゃないでしょうか。
そして、ここにはもう一つ話があって、国の借金は純粋に増えます。最終的に金融機関が持とうが、日銀が持とうが、国の借金が増えることには違いがないです。
一方で、増税反対の話が後段に書いてありますが、復興財源を直接的に増税に求めようとしている人は少数派だと思うし、そこはポイントではないと思います。ポイントは、国債を新たに発行した上で、今後、国の借金をどう考えますかということになると思います。
復興税を主張している人たちにも類型があって、速やかに増税を目指す人たちと、景気の影響を考えて、ある程度時期が経ってからの増税を主張している人たちがいると思います。この方の主張の中の震災後の中で増税に踏み切ると、という話がありますが、合理的に考えて、この震災後というのは今のことを指しているんだと思います。来年や再来年のことを指しているのではないと思うので、震災の影響が落ち着いた中で、税金をある程度増やして、少なくとも今回分の国債増発を解消するということなら問題は少ないと思います。
とは言っても、それで日本の借金が多い問題が解決するわけではないので、その先にどうするかという問題が待っています。それには、支出を減らすか、収入を増やすか、その両方ということになります。
話は戻りますが、この方の意見の中では、増えた国債をどうするかという話が欠けています。とりあえず国債を発行して、復興の予算を確保すべきだと思いますが、復興がある程度進んできた中で、今回の国債増発分も含めてどうするかを考える必要があり、それは国債発行議論と同時に議論しても構わないと思います。あまりに無秩序に国債発行の議論を進めると、ここ20年間繰り返して来た失敗を繰り返してしまうので、すぐに増税するのは反対ですが、いずれかのタイミングで増税で国債の発行残高を減少する政策というのは必要だと思います。もちろん、それと同じくらい重要な問題として、政府の支出を減らすことも、復興による支出がひと段落した段階で実行に移すべきだと思います。
記事のリンク
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110424-00000075-san-pol
この記事の最後に、この方の結論がありますが、全文引用します。
「政府が巨額の復興国債発行を決め、日銀が発行規模に応じたお札を刷って市場に流す。すると、通常は通貨の大量増発ということで円急落の要因になってしまうと心配する向きもいる。ところが、復興国債を買うために民間金融機関が外貨建て資産を換金する際に円が買われるので、円相場はむしろ上昇するかもしれない。米国にはない金融債権大国の利点である。
逆に、菅直人政権は復興財源を増税に求めようとする。震災後の消費自粛ムードの中で増税に踏み切ると、内需は急激に落ち込む。民間の消費や投資に必要な資金は政府に吸い上げられる。震災前からの慢性デフレは悪化し、円の対外価値、つまり円相場だけが上昇する。生産設備被害、国際的な放射能風評被害や節電の影響を受けている輸出産業に何重ものマイナス圧力がかかる。」
このパートは前段と後段に分かれているので、まず前段に書いてあることを時系列に沿って書くと、
復興債を買うために、民間金融機関が外貨建て資産を円に換金する。
政府が復興債を発行する。
民間金融機関がそれに応じる。
最後に、日銀が復興債の発行規模と同じ額の国債を市場から買う。
ということになります。曲解はしてないと思います。この方はおそらく、日銀が直接的に政府の債券を引き受けるということは主張していなくて、民間金融機関が国債に応札することを書いているんだと思います。それも日銀は復興債が市場に出回った後で、国債を買うんだ思います。そうでなければ、復興債を買うために金融機関が外貨資産を円に換金するという話が出てこないので。
ここで書いてあることは二つあって、一つは復興債を市場で発行すること。もう一つは日銀が市場から国債を買うこと、つまり、金融緩和をすること。復興債を市場で発行することに関しては、ほとんどの人が必要だと感じてるんだと思います。
もう一つの金融緩和の話ですが、ここで書いてあるのは、それによって円安になる心配はあるけれど、民間金融機関が円を買うから大丈夫という趣旨になります。
まず民間金融機関が円を買うかということに関しては分かりません。そんなにストレートじゃないような気がします。更に、その結果として円高になるかというのは更に不確実です。その上ですが、復興債を日銀が市場から買うと、民間金融機関はお金が余ってしまいます。そうなるのであれば、彼らには外貨資産を売って、円を買うというインセンティブは根本的になくなってしまいます。この方向性で金融政策をというのは、少し乱暴のような気がします。
一方で、金融緩和の影響を考えるのであれば、直接的にはインフレがどうなるかということです。円安を議論することが間違っているとは思いませんが、直接的に重要なのは金融緩和をして、インフレを導かないかということです。
規模にももちろんよりますが、物価が上昇基調にある中で、更に金融緩和をするというのは危険だと思います。この週末に白川さんのコメントが流れていましたが、景気が極端に悪化するのなら、追加的な金融緩和もあるという話をしていました。ということは、僕が思っている以上に、日銀は景気にもある程度の責任を持つ気があって、多少のインフレは引き受けるということなんだと思います。
いずれにせよ、物価の維持が日銀の主目的で、安定した景気が日銀の副目的で、白川さんになって以降、日銀は以前よりも直接的に景気をどうするか考えるようになっているので、その枠組みの中で、ものごとが決定されることになります。
インフレとか何とか言わず、金融緩和すればいいじゃないかという人たちもいますが、もしここで金融緩和をした結果として、年末に物価上昇が5%になったとすれば、国民の生活が困ります。手取りは増えない中で、物価が5%も上がると、生活はそれなりに辛くなります。30%の物価上昇が許容範囲だというなら、大抵の金融緩和は可能だと思いますが、国民の許容範囲としては、物価が全体として4-5%上がると、高いと思うんじゃないでしょうか。
そして、ここにはもう一つ話があって、国の借金は純粋に増えます。最終的に金融機関が持とうが、日銀が持とうが、国の借金が増えることには違いがないです。
一方で、増税反対の話が後段に書いてありますが、復興財源を直接的に増税に求めようとしている人は少数派だと思うし、そこはポイントではないと思います。ポイントは、国債を新たに発行した上で、今後、国の借金をどう考えますかということになると思います。
復興税を主張している人たちにも類型があって、速やかに増税を目指す人たちと、景気の影響を考えて、ある程度時期が経ってからの増税を主張している人たちがいると思います。この方の主張の中の震災後の中で増税に踏み切ると、という話がありますが、合理的に考えて、この震災後というのは今のことを指しているんだと思います。来年や再来年のことを指しているのではないと思うので、震災の影響が落ち着いた中で、税金をある程度増やして、少なくとも今回分の国債増発を解消するということなら問題は少ないと思います。
とは言っても、それで日本の借金が多い問題が解決するわけではないので、その先にどうするかという問題が待っています。それには、支出を減らすか、収入を増やすか、その両方ということになります。
話は戻りますが、この方の意見の中では、増えた国債をどうするかという話が欠けています。とりあえず国債を発行して、復興の予算を確保すべきだと思いますが、復興がある程度進んできた中で、今回の国債増発分も含めてどうするかを考える必要があり、それは国債発行議論と同時に議論しても構わないと思います。あまりに無秩序に国債発行の議論を進めると、ここ20年間繰り返して来た失敗を繰り返してしまうので、すぐに増税するのは反対ですが、いずれかのタイミングで増税で国債の発行残高を減少する政策というのは必要だと思います。もちろん、それと同じくらい重要な問題として、政府の支出を減らすことも、復興による支出がひと段落した段階で実行に移すべきだと思います。