復興債という名前が少し気になります。震災復興に際しては、とりあえず国債を発行して資金調達すべきだと思いますが、通常の建設債ではなく、特例債でもない、新しい名前の債券を作る必要があるのかと少し感じてしまいます。


名前が復興債というだけで、普通の国債と変わらないのであれば、その名前でも良いとは思います。復興関連の法律を作って、それを根拠に債券を発行するということで、復興債ということであれば。


マーケットにとって重要なことは、それがどういう発行条件になるかということだけで、名前は重要ではありません。そして、通常の発行条件の範囲内にあれば、市場の金利レベルに添う形で値付けされると思います。


ただし、復興債というものと復興税というものをリンクさせると話は変わってきます。復興債が復興税というもので担保されているということなってしまえば、通常の国債よりも優良な債権になってしまいます。これは少し気持ち悪いです。


この気持ち悪いというのをどう表現すれば良いのか分かりませんが、微妙な不確実性があって違和感を覚えるくらいの感覚だと思います。何を言ってるかというと、日本の債券の中で一番安全であるはずの国債よりも、復興債というのはシニアな証券になってしまいます。


つまり、復興債というのが一番金利の低い商品になり、その次にその他の国債ということになってしまいます。一般的には、復興債の金利がより低く発行できるというよりは、その他の国債の金利が上がる可能性の方が高いと思います。


ただし、復興債の規模が10-20兆円の範囲であれば、JGBのマーケットの中で極めて小さい部分を占めるだけなので、おそらく影響は出ないと思います。ただし、それなりの可能性を秘めているので、気持ち悪いということになります。


政治的な感覚として、復興債という名前にすれば用途がハッキリするので、財政規律の担保が出来るのではないかという感覚があるのかもしれません。有権者に対してはそのロジックでも通じるとは思いますが、マーケットにとっては名前よりもどういう条件の債権かということが重要になります。有権者に対するロジックを一歩進めて、復興債というものと復興税というものをリンクさせてしまうと、想定していない結果をマーケットに与えるかもしれません。


と言うことになると、今回の復興のために建設債を発行すれば良いだけのことで、建設債の発行を忌避する理由はどこにもありません。今回の国債のマーキングする必要はそれほど高くなく、仮に復興税の規模に影響を与えるにしても、復興税の歳入規模を決めてしまえば済む話なので、大きな問題があるとは思いません。それよりは、今回の危機的対応がひと段落したときに、今回増えた国債をどうするのかという話だけでなく、トータルの国債規模にどうやって道筋をつけるのかを考えるべきだと思います。