前回、中国の次期5ヵ年計画の中の経済成長の部分に焦点を当てましたが、今回はそれに続く部分を考えたいと思います。それに続く部分は成長のひずみに焦点を当てているような気がします。


大項目としては、社会事業の発展、資源節約と環境保護、人民生活の改善の3つになります。まず最初のところの要点は教育と医療になります。中国政府の問題認識として、高度教育が不足しており、それに伴い新技術の創出力が弱いと考えています。ここをしっかり抑えなければ、更なる成長は覚束ないという認識があるんだと思います。


と同時に、医療の不足・不均衡も問題点として認識されています。これらの論点は一番最初に書いた論考の中に入っている7つのマクロ問題を構成するものです。外部から見ていると、中国の医療の不足・不均衡というのは見えないのですが、わざわざ問題として挙げているということは、深刻な問題があるのかもしれません。


次に資源節約と環境問題ですが、これは明らかに目に見える問題です。福岡で中国からの汚染物質によって霧が発生して問題になっていましたが、中国は大体あんな感じです。もちろん、そうではない場所もありますが、少なくとも南部の工業地帯はあれが普通です。それくらい目に見えます。


ここで重要なのは数値目標が入っていることでしょう。要点は4つで一次エネルギー消費に占める非化石燃料の割合を11.4%以上にすること、GDP単位あたりのエネルギー消費量と二酸化炭素排出量をそれぞれ16%と17%下げることと、主要汚染物質の排出量を8-10%減らすことと、森林を6億立方メートル増やし森林化率を21.66%にすることです。


非化石燃料の比率が11.4%以上ということですが、IEAのデータを使って日本政府がまとめた資料を見ていると、中国の非化石の比率は13%くらいになっています。それは2008年データですが、そんなに大きな変動があるとも思えません。どこかで数字がずれているんだと思いますが、ここから想定されることは、中国の非化石燃料に関して大きな目標を建てていないということだと思います。太陽光を増やすとか風力がという話ではなく、水力や原子力等が念頭にあるように思います。


その次に挙がっているのが単位GDPあたりのエネルギー消費量を下げること、単位あたりの二酸化炭素排出量を下げること、そして主要汚染物質の排出量を下げることですね。これには2つの方向性があると思います。一つは非効率で古い生産設備を廃棄する、あるいは工場を停止することですね。もう一つが効率的な新しい設備を導入することです。その際に、汚染物質の排出量を下げるような設備を付加するということになります。


工場の統廃合によってより効率的で大型な生産設備が出てくるので、日本にとっては安い調達先であり、より手ごわい競争相手になるのかもしれません。一方で、より効率性を上げるものと、汚染物質や二酸化炭素の排出を削減するような設備はより売れるということかもしれません。


実はアメリカにも似たような議論があります。想像がつくかもしれませんが、アメリカと中国が世界の二大エネルギー消費国で、世界のエネルギー消費の半分ほどを占めています。一方で中国と同じくらいのGDPがある日本の消費量は、それほどでもありません。それは日本が一番エネルギー消費の効率的な国だからです。


そこでアメリカでは2つの方向性の議論があって、日本が技術開発できるんだから、アメリカでも技術開発をしようという意見と、日本でもう開発も導入も終わっているんだから、それをアメリカに導入する方が効率的だという意見です。アメリカはおそらく両方の方向性を目指して、日本からそれらの設備やものを買うことになるんだと思います。


一方で、中国が何を考えているかは分かりません。中国の環境問題に日本が手助けすることは良いことだとは思いますが、見合うだけの対価はしっかりと取る前提で議論をした方が良いような気がします。そもそもアメリカほど資本市場に対する信頼はない国なので。


ここまで書いた時点でちょっと長くなってしまったので、人民生活の改善に関しては次回に回します。