国有財産の証券化の話をずっと書いてきましたが、賛成論の中に、政府が保有している貸付金を証券化すれば良いんだというのがありました。



それを見て思ったのですが、政府が保有している貸付金って、もしかしたら、怪しいものじゃないかと思って、調べてみることにしました。



ということで、財政投融資を調べてみましょう。
http://www.mof.go.jp/jouhou/kaikei/syokan/kaiji.htm
ここにあります。



詳細の数字が出ているのは平成20年度版しかないです。
http://www.mof.go.jp/jouhou/kaikei/syokan/zaitou_zaimu20.pdf
これです。



このPDFの14ページ目に貸付金の詳細があります。大きな項目を挙げてみましょう。
貸付金総額:190兆円
一般会計向け:20兆円
交付税向け:12兆円
地方公共団体:59兆円
小計>91兆円



ということで、政府内部での貸し借りが半分を占めています。交付税も含めると、地方公共団体向けがかなりの部分を占めるんですね。これを見てて思うのですが、一般会計向けのものと交付税向けのものは単なる内部消去に近いですね。短期貸付を続けていたら、こんな金額になってしまったんでしょうか?それとも、意図的に何かを付け替えたか。過去からのデータを足しあわすと、それが何だったかは分かります。



地方公共団体向けは政府から貸す意味は分かりますが、こんなに残高があって良いのかは分かりません。多いような気がします。ちなみに、これらは証券化しても無意味です。



それ以外の大物は、
日本政策金融公庫:15兆円
住宅金融支援公庫:28兆円
都市再生機構:10兆円
高速道路:6兆円
政策投資銀行:6兆円
小計>65兆円



これで総額の1/3超を占めます。残りは40兆円弱です。このうち、高速道路と政策投資銀行は民営化の方向にありましたが、現状はどうも逆コースにありますね。都市再生機構も再編成が議論されています。残りは住宅金融支援公庫と日本政策金融公庫ですね。住宅金融公庫を証券化しても良いですが、それはサブプライムを証券化して、CDOにスライスして売るのとほぼ同じことになります。アメリカンですね。



ということで、これが貸付金の中身です。まだ1兆円から何千億単位のものもあるので、興味がある人はリンク先の資料を読んでください。



結論からすると、貸付金の中で証券化できるものは極めて限られており、民営化の一里塚として証券化を議論するのも無意味ですね。なぜなら、上に掲げた5つの機関のあり方を議論するだけで、貸付金の大部分を整理することが出来ます。もちろん、政府内部の貸借を除いたベースですが。